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All The Things You Are

  • 作曲: KERN JEROME
#スタンダードジャズ
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All The Things You Are - 楽譜サンプル

All The Things You Are|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「All The Things You Are」はジェローム・カーン作曲、オスカー・ハマースタイン2世作詞。1939年ブロードウェイ・ミュージカル『Very Warm for May』のために書かれ、その後ジャズ界で広く定番化した。ボーカル曲として生まれつつ、器楽でも頻繁に演奏され、スタンダード集やレッスン教材に必ず名を連ねる一曲である。

音楽的特徴と演奏スタイル

AABA系の拡張36小節形式。各Aで調の重心が段階的に移動し、Bで新たな中心を提示、最後のAでカデンツを延長する設計が特徴だ。五度圏に沿う転調と連続するII–V進行が骨格を成し、ガイドトーンの声部進行が明快なライン作りを促す。テンポはミディアム・スイングからバラードまで幅広く、ボーカルは歌詞のレガートを活かし、器楽はトライトーン・サブやリハーモナイズで和声的彩りを加える演奏が好まれる。

歴史的背景

初演当時はミュージカル・ナンバーとして親しまれたが、1940年代以降に多くのジャズ奏者が取り上げ、急速にスタンダード化した。歌心のある旋律と高度な和声設計の両立は、ビバップ以降の即興語彙の形成にも寄与し、セッション文化の拡大とともに受容が進んだ。今日では理論と実践の架け橋となる教材として、音大やワークショップでも早期に学ばれる代表曲である。

有名な演奏・録音

名演は枚挙にいとまがない。エラ・フィッツジェラルドは『Jerome Kern Song Book』で端正な歌唱を残し、アート・テイタムはピアノ独奏で超絶的な和声展開を示した。さらに、チャーリー・パーカーの『Bird of Paradise』は本曲のコード進行に基づくコントラファクトとして知られ、楽曲の和声言語が即興創作の母体として機能してきた事実を物語る。

現代における評価と影響

本曲は、コード進行の学習、音中心の変化に沿うライン構築、長いフレーズの呼吸法など、多面的訓練に適した教材として評価が高い。セッションでもキーやテンポの可変性に富み、デュオからビッグバンドまで対応可能。編曲次第でモーダルな解釈やラテン・フィールへの置換も成立し、演奏者の創造性を刺激し続けている。

まとめ

歌としての普遍性と、即興の土台となる緻密な和声を併せ持つ「All The Things You Are」は、時代を超えて奏者と聴き手を惹きつける。初学者の入口から上級者の探究対象まで、何度向き合っても新発見を与えるジャズ・スタンダードの金字塔である。