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Chega De Saudade (No More Blues)
- 作曲: JOBIM ANTONIO CARLOS

Chega De Saudade (No More Blues) - 楽譜サンプル
Chega De Saudade (No More Blues)|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Chega De Saudade(英題: No More Blues)は、作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンの代表作で、ボサノヴァを象徴するスタンダード。原詞はヴィニシウス・ジ・モライス。歌詞の詳細は割愛するが、サウダージ(郷愁)をめぐる感情をテーマにした楽曲として知られる。初出年は情報不明。現在はジャズ/ポップ双方の現場で広く取り上げられ、インストゥルメンタルでも歌ものでも演奏される。
音楽的特徴と演奏スタイル
穏やかなシンコペーションと軽やかなギターのコンピング、そしてクロマチックを含む洗練された和声進行が核。中庸のテンポで、メロディは流麗かつ語り口のように抑制的。ボーカルは言葉数を詰め込まず、柔らかなアクセントで“後ノリ”を作るのが定石。ジャズ奏者はコードの拡張や代理和音を用い、シンプルなリズム上で豊かなアドリブを展開する。ピアノ/ギターの弾き語りはもちろん、サックスやトランペットのインストでも旋律の美しさが際立つ。
歴史的背景
1950年代末のリオ・デ・ジャネイロで台頭した新しい都市型サウンド=ボサノヴァの文脈で誕生。エリゼッチ・カルドーゾの録音(1958年)に続き、ジョアン・ジルベルトのシングル(1958年)とアルバム『Chega de Saudade』(1959年)が楽曲とスタイルを広く知らしめたとされる。以後、ブラジル内外へ波及し、ジャズ・クラブの定番曲となった。英語詞による“No More Blues”というタイトルでも知られ、国際的な広がりに寄与した。
有名な演奏・録音
初期の決定的名演としては、エリゼッチ・カルドーゾ、ジョアン・ジルベルトが挙げられる。作曲者ジョビン自身も後年たびたび演奏を残し、ピアノを中心にした繊細な表現で楽曲の和声美を際立たせた。英語詞版“No More Blues”としても多くのシンガー/ジャズ・ミュージシャンにカバーされ、器楽版でも標準的レパートリーとなっている。特定の映画での使用は情報不明だが、ライブ録音やスタジオ作で数多くのバージョンが流通している。
現代における評価と影響
本曲は「ボサノヴァの出発点」としばしば言及され、国際的なジャズ・スタンダードとして定着。ギター伴奏のボサノヴァ・グルーヴは後続の作編曲に大きな指針を与え、音大や音楽教室の教材にも頻出する。セッションでは原語歌唱・英語詞・インストのいずれでも通用し、編成の大小を問わず取り上げやすい。配信時代においても再生され続け、名曲としての生命力を保っている。
まとめ
Chega De Saudade(No More Blues)は、抑制の美学と高度な和声が同居する永遠の名曲。歴史的意義と演奏実用性を兼ね備え、入門者からプロまでがレパートリーに据える理由は明快だ。歌でも器楽でも魅力が失われず、今後もスタンダードとして生き続けるだろう。