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Inner Urge

  • 作曲: HENDERSON JOE
#コンテンポラリー
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Inner Urge - 楽譜サンプル

Inner Urge|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Inner Urgeは、テナーサックス奏者ジョー・ヘンダーソンが作曲したインストゥルメンタルのジャズ曲。自身の同名アルバム(Blue Note)に収録され、1964年に録音されたことで広く知られる。タイトルは「内なる衝動」を意味し、ヘンダーソンの創作欲と当時の先鋭的なジャズ志向を象徴する楽曲として位置づけられている。歌詞は存在せず、セッションでも頻繁に取り上げられるハード・ポップ〜ポスト・バップ系の定番曲である。

音楽的特徴と演奏スタイル

鋭角的でレンジの広いメロディ、機能和声に依存しない循環的なコード進行、モーダルな響きとテンションを積極的に用いたハーモニーが特徴。明確なトニック感を希薄化し、緊張と解放を推進力とする設計は、即興に高度なスケール運用とモチーフ展開力を要求する。テンポは中速からアップテンポで演奏されることが多く、リズムセクションはペダルポイントやシンコペーションを交えながらダイナミックな推進を担う。ソロではメロディの断片化、シーケンス処理、アウトサイド志向のラインなどが効果的で、サックスのみならずギターやピアノでも映える。

歴史的背景

1960年代半ばのブルーノート期、ニューヨークの最前線でヘンダーソンは独自の語彙を確立した。Inner Urgeはその過程で生まれ、ポスト・バップの語法にモーダル/非機能和声のアプローチを融合させた象徴的ナンバーとなった。初出はヘンダーソン名義のアルバム・セッションで、マッコイ・タイナーやエルヴィン・ジョーンズら同時代の名手とともに録音され、当時の革新的リズム感とハーモニー感覚を鮮烈に刻印した。

有名な演奏・録音

最も参照されるのは、ジョー・ヘンダーソン自身のアルバム『Inner Urge』におけるオリジナル録音である。以後、多くのサックス奏者やピアニスト、ギタリストがレパートリーに採用し、ライブや教育現場でも定番化。プロ/アマ問わずカバーが増え、コンボ編成での実演に耐える構造と、ソロイストの個性を引き出す余白の広さが評価され続けている。具体的な映画使用などは情報不明だが、ジャズクラブや音大のリサイタルで頻繁に取り上げられる。

現代における評価と影響

Inner Urgeは、ポスト・バップ以降の即興言語を学ぶうえでの重要教材であり、ハーモニック・リズムの流動性、音域設計、テンション運用の模範として扱われる。実演ではメロディ解釈の自由度が高く、現代的なポリリズムやアウトサイド志向との親和性も高い。スタンダードとしての普遍性と、挑戦的な難度が同居するため、プレイヤーの成熟度を映す“試金石”として評価されている。

まとめ

Inner Urgeは、ジョー・ヘンダーソンの創造力を結晶化したジャズ・スタンダードで、鋭いメロディと非機能的ハーモニーが即興表現の地平を広げた。オリジナル録音を基点に多彩な解釈が生まれ、今日もセッション現場で生き続ける。歌詞はなく、純粋にサウンドで語る名曲である。