Isfahan
- 作曲: ELLINGTON DUKE,STRAYHORN BILLY

Isfahan - 楽譜サンプル
Isfahan|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Isfahan」は、デューク・エリントンとビリー・ストレイホーンの共作バラード。エリントン楽団の組曲『The Far East Suite』に収められ、初演盤ではアルトの名手ジョニー・ホッジスが主役を務める。タイトルはイランの都市名にちなみ、洗練された憂愁と気品をたたえた楽想が印象的だ。
音楽的特徴と演奏スタイル
穏やかなテンポのバラードで、長いレガートの主旋律をセクションの柔らかな和声が包む。ホッジスのヴィブラートと滑らかなスライドが旋律に陰影を与え、ピアノは和声の要所を点描。リズムはウッドベースとブラシで呼吸感を保ち、音色と間合いの設計で魅せる。過度な技巧よりもダイナミクスとサステインの扱いが表現の鍵となる。
歴史的背景
『The Far East Suite』は、エリントン楽団が1960年代に行った海外公演で得た印象を素材に構想された作品群。その中で「Isfahan」は異国趣味の模写に終わらず、二人の作編曲術が結晶したモダン・ジャズへと昇華。ホッジスの資質を生かす書法も聴きどころだ。
有名な演奏・録音
決定的名演は組曲収録のオリジナルで、ホッジスのアルトが語り部となる。以後はビッグバンドのみならず小編成でも再演が相次ぎ、テナー、フリューゲルホーン、ギター、ピアノ・トリオなど多様な編成で取り上げられている。ストレイホーン作品集などにも収録され、表現の幅広さが示されている。
現代における評価と影響
抒情性と編曲の妙を兼ね備えた本作は、教育現場や実演でスタンダードとして定着。アドリブでは旋律の品位と和声の陰影を生かす語り口が鍵。編曲家にとってもセクション・バランスと音色設計を学ぶ好例となる。録音・配信の時代でも定期的に新録が現れ、評価は揺るがない。
まとめ
都市名を冠しつつ、旅情の記号化を超えて普遍的な歌心に到達したバラード。エリントンとストレイホーンの美学、ホッジスの美音、オーケストレーションの洗練が結びついた名曲であり、今日も多くの演奏家とリスナーを魅了し続けている。初聴には組曲収録版が好適だ。