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It's A Raggy Waltz
- 作曲: BRUBECK DAVE

It's A Raggy Waltz - 楽譜サンプル
It's A Raggy Waltz|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「It's A Raggy Waltz」はデイヴ・ブルーベック作曲のインストゥルメンタル。初出は1961年のアルバム「Time Further Out」。ジャズ・ワルツの形式をとり、ブルーベック(p)、ポール・デスモンド(as)、ユージン・ライト(b)、ジョー・モレロ(ds)によるカルテットで録音された。ワルツを基調にしつつ、タイトル通りラグタイムの要素を意識させる設計が特徴で、作曲者のリズム探求が結実した一曲である。
音楽的特徴と演奏スタイル
3/4拍子のワルツに、ラグタイム由来の「ラギー」なシンコペーションを重ねるのが核。主題は軽快に躍り、アドリブでは左手のストライド風アクセントと、ベースの3拍ウォーキング、ドラムのブラシ/スティックの切替が立体感を生む。テンポは中庸で、スイング感と明瞭な拍感のバランスが肝要。ピアノとサックスのコール&レスポンス、休符の活かし方がグルーヴを決定づける。
歴史的背景
ブルーベックは「Time Out」(1959)で変拍子ジャズを一般化し、その探求を「Time Further Out」(副題:Miro Reflections)で発展させた。本曲は奇数拍の可能性を、伝統的ラグタイムの語法と融合させた一例であり、当時のモダン・ジャズにおけるリズム意識拡張の文脈に位置づけられる。芸術的コンセプトと実践的な即興の両立が図られた点でも重要だ。
有名な演奏・録音
基準となるのはオリジナルの「Time Further Out」(1961)収録テイク。以降、同カルテットによる各地のライヴでも取り上げられ、ジャズ・ピアニストやコンボのレパートリーとして演奏されてきたが、網羅的なカヴァー一覧やチャート成績は情報不明。教則や演奏会での定番化により、世代を越えて親しまれている。
現代における評価と影響
3拍子をスイングさせる実践教材のような楽曲として、リズム・トレーニングやアンサンブル教育の題材に好まれる。耳に残る主題と明解なフォームは、入門者から上級者までアドリブ設計がしやすい点も評価される。配信時代においても、ジャズ・ワルツの魅力を伝える代表例としてプレイリストや講義で参照されることが多い。
まとめ
ワルツの優雅さにラグタイムの躍動を組み合わせた、ブルーベック流リズム美学の結晶。オリジナル録音に耳を傾ければ、音価の置き所と休符の呼吸が要であることが明確に学べる。歴史的背景と演奏上の勘所を押さえれば、シンプルな素材から豊かな表現を引き出せるだろう。