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Let's Fall In Love
- 作曲: ARLEN HAROLD, KOEHLER TED

Let's Fall In Love - 楽譜サンプル
Let's Fall In Love|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Let's Fall In Love」は、作曲Harold Arlen、作詞Ted Koehlerによる楽曲。1933年公開の同名映画のために書かれ、その後ジャズ界で広く取り上げられるスタンダードとなった。軽やかなタイトル通り、恋の始まりを甘く背中押しする内容だが、歌詞の全文はここでは扱わない。また、しばしばCole Porterの「Let's Do It (Let's Fall in Love)」と混同されるが、別作品である点に注意したい。
音楽的特徴と演奏スタイル
明快なメロディとスイング感が魅力で、テンポはミディアムからミディアムアップが定番。ヴォーカルは語り口のニュアンスが活き、フレーズの余白にスキャットやアドリブを差し挟みやすい。コード進行はジャズ語法に馴染み、転調やブリッジでの色調変化が演奏にドラマを与える。スウィング、スモール・コンボ、ビッグバンド、さらにはボサ・ノヴァ風のアレンジまで幅広く適応する汎用性も支持される理由だ。
歴史的背景
1930年代アメリカの映画音楽とポピュラー・ソングが密接だった時代に誕生。ArlenとKoehlerは当時のヒットメーカーとして数多くの名曲を世に送り、映画やレビューの現場で磨かれた書法が本曲にも反映されている。公開当初から親しみやすい旋律で注目を集め、映画の枠を超えてラジオ、ダンスホール、クラブへと広がり、自然にジャズ・レパートリーへ定着していった。
有名な演奏・録音
代表的な録音として、Ella Fitzgeraldの「Ella Fitzgerald Sings the Harold Arlen Song Book」(1961年)が挙げられる。アレン作品集の中でも本曲は明快なSwingで、解釈の基準点として参照される。また、Diana Krallの「When I Look In Your Eyes」(1999年)収録ヴァージョンは、洗練されたリズム処理と落ち着いたテンポ感で現代的な魅力を提示。他にも多くの歌手・ジャズ・コンボが取り上げている。
現代における評価と影響
現在もライブやレコーディングで頻繁に演奏される定番曲で、ヴォーカル入門から熟練者の表現まで対応する間口の広さが評価される。広告や映像作品での引用例もあり、明るくロマンティックなムードを作る選曲として重宝される。実演ではキー設定やテンポ、エンディングの作りで個性が出やすく、教育現場でもフレージングやスウィング・フィールを学ぶ素材として有用だ。
まとめ
映画生まれの「Let's Fall In Love」は、耳馴染みの良い旋律と柔軟なアレンジ適性で、世代とスタイルを超えて演奏され続けるジャズ・スタンダードである。軽快なロマンティシズムは今も色あせず、ヴォーカル/インスト双方の名演を生み出している。入門者にも取り組みやすく、聴き手にとってはジャズの魅力を凝縮して味わえる一曲と言える。