Limehouse Blues
- 作曲: BRAHAM PHILIP

Limehouse Blues - 楽譜サンプル
Limehouse Blues|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Philip Braham作曲、Douglas Furber作詞。1922年に発表され、前年のロンドン・レビュー『A to Z』で初めて紹介されたとされる。歌詞付きの楽曲だが、ジャズ界では高速インストゥルメンタルとして広く定着し、現在も標準曲として演奏される。原題はロンドン東部のライムハウス地区に由来する。
音楽的特徴と演奏スタイル
短調を基調とするスウィング感の強い主題が特徴。曲名に反して12小節のブルース形式ではなく、ジャズらしい和声進行と急速テンポでのアドリブが映える。速いウォーキング・ベース、ダブルタイム、クロマチックなラインが効果的で、ソリストの技量が試される。
歴史的背景
1920年代の英国では、ライムハウスは中国系移民の居住地として知られ、大衆文化で異国趣味的に描かれた。本作の歌詞にも当時のステレオタイプ的表現が含まれる点が指摘され、今日では文化的感受性への配慮から器楽演奏で取り上げられることが多い。
有名な演奏・録音
代表的録音には、ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリ率いるホット・クラブ・ド・フランス、デューク・エリントン楽団、ベニー・グッドマン、アート・テイタム、オスカー・ピーターソンらがある。映画ではMGM『Ziegfeld Follies』(1946)でフレッド・アステアのダンス場面に用いられた。
現代における評価と影響
難度の高いアップテンポ小品として、ジャム・セッションや教育現場で定番。短調主題の歌心とスリリングなソロ展開の両立が評価される。一方で歌詞は歴史的文脈の理解を要し、解釈や選曲に際しては表現上の配慮が推奨されている。
まとめ
『Limehouse Blues』は、1920年代に生まれた歌もの由来のジャズ・スタンダードで、器楽演奏で真価を発揮する楽曲である。疾走感ある旋律とソロの妙、そして時代背景を踏まえた受容の在り方まで知ることで、より立体的に楽しめるだろう。