Almost Blue
- 作曲: COSTELLO ELVIS,MAC MANUS DECLAN PATRICK ALOYSIUS

Almost Blue - 楽譜サンプル
Almost Blue|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Almost Blue」はElvis Costello(本名:Declan Patrick Aloysius MacManus)によるバラードで、初出は1982年のアルバム『Imperial Bedroom』。ポップ/ロックのフィールドから生まれた楽曲ながら、後年はジャズ・シーンで広く歌われ、演奏されるようになり、事実上のスタンダードとして定着した。作曲・作詞はいずれもElvis Costello。タイトルが示す通り、ほの暗い憂愁と未練をたたえたムードが核にあり、歌詞全文はここでは扱わないが、恋の残響と静かな諦念を主題とする。
音楽的特徴と演奏スタイル
テンポはスローで、柔らかなダイナミクスと間(ま)を重視するバラード。旋律はため息のように沈潜しつつも局所的に跳躍を含み、失われた恋情を象る。ハーモニーは半音階的な移ろいを感じさせ、哀感を強調。ジャズの現場ではヴォーカルとミュート・トランペット(あるいはフリューゲルホルン)のオブリガートがよく用いられ、ルバートを交えた自由な語り口で解釈されることが多い。ピアノ・トリオ伴奏やギター主体の室内楽的編成とも相性がよく、終止は余韻を残すフェードやロングトーンで締めくくられることが多い。
歴史的背景
1980年代初頭のCostelloは、ロックの枠にとどまらず、古典的ポップやジャズに通じる語法を積極的に取り入れていた。その探究の中で「Almost Blue」は生まれ、自己のソングライティングを内省的なバラードへと拡張した象徴的作品となる。リリース後、ジャズ・ミュージシャンにも取り上げられ、ポピュラー音楽とジャズの橋渡しをするレパートリーとして認知が進んだ。
有名な演奏・録音
オリジナルのElvis Costelloによる録音(1982年)は、陰影のあるヴォーカルと簡素な伴奏で曲想を際立たせた。その後、Chet Bakerが晩年に取り上げ、脆くも艶のあるトーンで歌い上げた演奏は名唱として広く知られる。さらに、Diana Krallをはじめとするジャズ・ヴォーカリストや器楽奏者による解釈も多数存在し、クラブやコンサートでの定番曲として定着。編成はソロから小編成コンボ、弦を加えたアレンジまで幅広く、各演者の表現力が如実に反映される。
現代における評価と影響
「Almost Blue」は、世代やジャンルを超えて継続的にカバーされる稀有な楽曲であり、ポップ発の楽曲がジャズの語法と親和し得ることを示した好例として語られる。音楽学校やワークショップでもバラード解釈の教材として選ばれることがあり、歌詞の含意と音価のコントロール、サブトーンやブレスの配置など、表現の精度を問うレパートリーとして評価が高い。
まとめ
Elvis Costelloが紡いだ「Almost Blue」は、静謐な哀しみをたたえるバラードでありながら、演者の個性を映す鏡として無限の解釈を受け入れてきた。オリジナルの魅力はもちろん、数々の名演によって楽曲は磨かれ、今なおステージで息づく現代的スタンダードとして位置づけられている。