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And the Angels Sing

  • 作曲: ELMAN ZIGGY,MERCER JOHN H
#スタンダードジャズ
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And the Angels Sing - 楽譜サンプル

And the Angels Sing|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Ziggy Elman作曲、Johnny H. Mercer作詞による「And the Angels Sing」は、1939年にベニー・グッドマン楽団と歌手マーサ・ティルトンの録音で広く知られたジャズ・スタンダード。原型はエルマンのインストゥルメンタル曲「Frailach in Swing」(1938)で、ユダヤ系クレズマーの旋律をスウィングへ翻案した素材に歌詞が与えられて誕生した。歌詞の全文はここでは扱わないが、天使の歌声になぞらえたロマンティックな情景描写が特徴とされる。

音楽的特徴と演奏スタイル

中速のスウィング感、華やかなトランペットによるクレズマー風の装飾音やメリスマが象徴的。イントロの“フレイライヒ”風フレーズから、流麗で歌いやすい主旋律へと接続し、ダンス・バンドにもヴォーカル物にも適応する。アレンジではブラスのコール&レスポンス、サックス・セクションのリード、そしてトランペット・ソロが映える構成が定番。ヴォーカル版では、メロディのレガートとスウィングの後ノリをどう両立させるかが表現の要点となる。

歴史的背景

1930年代末はビッグバンド最盛期。異文化の旋律をジャズ言語に取り込む試みが活発化し、エルマンの出自を反映した本曲はその象徴例となった。1939年のグッドマン楽団盤は全米チャートで大ヒットを記録し、同年を代表するナンバーとしてダンスホールとラジオで広く愛聴された。器楽曲としての成功に、マーサ・ティルトンの歌唱とマーサ・ティルトンの可憐なトーン、そしてメルサーの詞が加わることで、ジャズとポピュラーの橋渡し的存在へと定着した。

有名な演奏・録音

もっとも著名なのはベニー・グッドマン楽団+マーサ・ティルトンの1939年録音。エルマン自身のバンドやグッドマン楽団のライヴでは、原曲「Frailach in Swing」を活かした拡張イントロやトランペット・コーラスが聴きどころとなる。その後も多数のスウィング系ビッグバンドとジャズ・シンガーがレパートリーとして取り上げ、クリシェの扱い、ブレイクの入れ方、ブラスのハーモニー処理など、編曲の妙を競う対象となってきた。具体的な使用映画の情報は情報不明。

現代における評価と影響

本曲はジャズ史における“ハイブリッド”成功例として参照され続ける。ジャム・セッションではスウィング・フィールの訓練曲として、ビッグバンドではショウピースとして機能。クレズマーの語法をジャズに自然に溶け込ませた点は、ワールド・ミュージック的発想の先駆としても評価される。教育現場でも、ビートのノリ、ブラスのバランス、ヴォーカルのレガートとスウィングの両立を学ぶ教材として採用されることが多い。

まとめ

「And the Angels Sing」は、民族的旋律とアメリカン・スウィングの融合が生んだ普遍的名曲。オリジナルの精神を保ちつつ、イントロの色彩や歌心をどう際立たせるかが鑑賞・演奏の鍵になる。名演を聴き比べることで、編曲と解釈の幅広さを実感できるだろう。