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Look For The Silver Lining
- 作曲: KERN JEROME

Look For The Silver Lining - 楽譜サンプル
Look For The Silver Lining|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Look For The Silver Lining」は、作曲家ジェローム・カーンによる楽曲で、作詞はB.G.(バディ)・デシルヴァ。1919年に発表され、1920年のブロードウェイ・ミュージカル『Sally(サリー)』で広く知られるようになりました。悲観の中にも希望の兆し(雲の“銀の縁”)を見いだすというテーマが核にあり、アメリカのポピュラー音楽史、ひいてはジャズ・スタンダードとして定着した名曲です。調性や初演の具体的編成など細部は情報不明ですが、ヴォーカル曲として多く録音され、インストゥルメンタルでも親しまれています。
音楽的特徴と演奏スタイル
柔らかく上昇・下降する旋律線と、希望へ向かう歌詞内容が結びついた構成が魅力。穏やかなテンポのバラードとしても、中庸のスウィングで軽やかに演奏しても映える汎用性があり、ヴォーカリストには言葉運びを生かしたレガート表現、器楽奏者にはリリカルなフレージングを引き出すナンバーとして支持されています。和声進行は古典的な機能和声を基盤とし、セカンダリー・ドミナントなどを用いた自然な推進力が印象的。イントロや間奏の付加、転調によるダイナミクス設計も定番で、アレンジの自由度が高い点もスタンダードとしての強みです。
歴史的背景
本作は第一次世界大戦後の米国で、舞台芸術と大衆音楽が急速に結びついていく時期に誕生しました。『Sally』の成功とともに曲の知名度は上がり、やがてグレイト・アメリカン・ソングブックの一角として定着。1940年代に入ると、作曲家カーンの伝記映画『Till the Clouds Roll By』(1946)でジュディ・ガーランドがマリリン・ミラー役として本曲を披露し、さらに1949年にはマリリン・ミラーの半生を描いた映画『Look for the Silver Lining』が公開され、タイトル曲として再評価が進みました。
有名な演奏・録音
名演として挙げられるのは、ジュディ・ガーランドによる映画での歌唱(『Till the Clouds Roll By』内)が筆頭。ジャズではチェット・ベイカーが『Chet Baker Sings』(1954)で取り上げ、切実で親密なヴォーカル解釈を示しました。以降、多くのジャズ・ヴォーカリストやコンボがレパートリーに組み込み、スウィングからバラード、ボサ・ノヴァ風味のクロスオーバーまで幅広く解釈されています。チャート成績や初出の具体的録音データの細部は情報不明ですが、録音史上の存在感は明白です。
現代における評価と影響
逆境のなかに希望を見出す普遍的メッセージは時代を超えて響き、教育現場のスタンダード教材やジャム・セッションのレパートリーとしても定番化。メロディの歌いやすさとアレンジ耐性の高さは、コンサート、ライヴ、映像作品まで用途が広く、入門者から上級者までが表現を磨ける一曲として重宝されています。プレイリスト文化でも再発見が進み、歴史的名演と新録の往復が継続的な関心を喚起しています。
まとめ
「Look For The Silver Lining」は、舞台由来の名メロディと前向きなメッセージが結びついた、時代を超えるジャズ・スタンダードです。映画や数々の録音を通じて世代を超えて歌い継がれ、今なお演奏現場で生命力を保ち続けています。基本に忠実な解釈でも、現代的なリハーモナイズでも映える柔軟性は、名曲としての強度の証しと言えるでしょう。