Big Spender
- 作曲: COLEMAN CY

Big Spender - 楽譜サンプル
Big Spender|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Big Spender」は、作曲Cy Coleman、作詞Dorothy Fieldsによるブロードウェイ・ミュージカル『Sweet Charity』(1966年初演)の楽曲。クラブのダンサーたちが裕福な客に呼びかける場面で歌われ、ショー・チューンでありながら後年ジャズの定番曲としても親しまれている。挑発的でウィットに富む歌詞と、耳に残る低音のリフが特徴。
音楽的特徴と演奏スタイル
低音のオスティナートとブラスの鋭いヒットが生むゴージャスな質感、ゆったりしたスウィング・フィール、語りと歌を横断するスピーク・シンギングが核となる。半音階的な進行やユニゾンの合いの手が緊張感を高め、ビッグバンド編成でも小コンボでも映える。歌手はヴィブラートやグロウルを控えめに使い、間(ま)と表情で挑発のニュアンスを描くのが定石。
歴史的背景
『Sweet Charity』はボブ・フォッシーの演出・振付で知られ、1969年には映画版も制作。クラブのラインダンスと無表情なポーズで構成された「Big Spender」のステージングは象徴的で、後のミュージカル演出に大きな影響を与えた。楽曲は初演直後からショーの枠を越え、ジャズ/ポップのレパートリーに拡散していく。
有名な演奏・録音
オリジナル・ブロードウェイ・キャスト録音と映画版サウンドトラックが基準版として知られるほか、シャーリー・バッシーの力強いカバーは国際的なヒットとなり、曲の知名度を決定づけた。ペギー・リーをはじめ多くの歌手が取り上げ、キャバレーやテレビ番組でも定番。編曲はビッグバンド、ラテン風、モダン・ジャズ寄りなど多彩に発展。
現代における評価と影響
今日では「華やかな享楽」「誘惑」「金満家」といったイメージを瞬時に喚起する楽曲として、舞台のほか各種メディアで引用されることが多い。音域が広すぎず表情で聴かせるため、オーディションや発表会の選曲としても人気。ジャズ教育の現場でも、ダイナミクスとリズムのコントロール、歌と演技の融合を学ぶ教材として重宝されている。
まとめ
ミュージカル発のショー・チューンでありながら、強烈なリフと演劇性を備えた「Big Spender」は、時代を超えて解釈の余地を提供し続ける。原典のフォッシー的美学を尊重する演出から、ジャズの即興性を前に出すアレンジまで、表現の幅が広いことがスタンダード化の理由と言える。入門にも再発見にも適した一曲だ。