あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

Lulu's Back In Town

  • 作曲: WARREN HARRY
#スタンダードジャズ#ジプシージャズ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

Lulu's Back In Town - 楽譜サンプル

Lulu's Back In Town|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Lulu's Back In Town は、作曲Harry Warren(ハリー・ウォーレン)、作詞Al Dubin(アル・デュビン)による1935年の楽曲。映画『Broadway Gondolier』で披露され、その後ジャズ界で広く取り上げられるスタンダードとなった。洒脱な言葉遊びと軽妙なスウィング感が持ち味で、恋人ルルの帰還に胸を弾ませる主人公の高揚感を、明るいメロディと機知に富む表現で描く。初出の歌手・編成の詳細は時期や資料によって異なるため、情報不明な点もあるが、発表年と作家陣については周知の事実である。

音楽的特徴と演奏スタイル

スウィング期の語法を色濃く湛え、軽快な中テンポで演奏されることが多い。滑らかなメロディはフレーズ末に小気味よいシンコペーションを含み、歌唱では言葉のアクセントを活かした表情付けが要となる。形式は一般的な32小節の歌形式(AABA系)で扱われることが多く、アドリブ・コーラスとの親和性が高い。ピアノではストライド奏法やウォーキング・ベースとの組み合わせが映え、コンボではブラスのシャウトやユニゾン・リフで軽やかな祝祭感を強調する。モダン寄りの解釈ではリハーモナイズやテンポの揺れを加え、遊び心と都会的な洗練を両立させる例が目立つ。

歴史的背景

1930年代半ば、ワーナー系のミュージカル映画で活躍したウォーレン&デュビンの名コンビから生まれた一曲で、当時のジャズ/ポピュラー音楽の橋渡し的存在。大恐慌後の娯楽需要を満たす軽妙な作風は観客に歓迎され、映画発のナンバーがダンスホールやレコード市場に迅速に広がる流通網の中で、ステージやラジオへ浸透した。本曲も例外でなく、映画公開後にダンス・バンドやジャズ・ピアニストたちのレパートリーへと定着していく。

有名な演奏・録音

代表的な名演として、Fats Wallerの躍動的なテイク(1935年)が広く知られ、ストライド・ピアノの粋を示した。さらにThelonious Monkはアルバム『It's Monk's Time』(1964年)で取り上げ、独特の和声感と間合いでモダン・ジャズ的に再解釈している。これらの録音は楽曲の懐の深さを示す両極的な好例で、スウィングからモダンまで幅広いアプローチを許容することを証明した。他にも多数の歌手・器楽奏者がレコーディングを残しており、編成やテンポの違いによってキャラクターが鮮やかに変化するのが魅力である。

現代における評価と影響

ジャズ教育の現場やセッションで取り上げられる機会は現在も多く、歌詞付きのステージ・ナンバーとしても人気を保つ。ユーモアと都会的な洒脱さ、そしてアドリブ空間を確保する構成のバランスが良く、ビッグバンドから小編成まで対応可能な“使える”スタンダードとして位置づけられている。オリジナルに敬意を払いつつ、テンポ変更や再ハーモナイゼーションで新味を加える解釈が定着しており、往年の華やぎを現代のサウンドで再提示できる稀有な楽曲と言える。

まとめ

Lulu's Back In Townは、映画発の軽妙な歌ものがジャズの現場で鍛えられ、時代をこえて生き続けることを示す好例である。作曲と詞の妙、演奏自由度の高さ、そして聴衆を一瞬で祝祭気分に誘う力が、今日までクラブやコンサートで選ばれ続ける理由だ。歴史に裏打ちされた普遍性と、演者の個性を映す余白を兼ね備えた、まさに王道のジャズ・スタンダードである。