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Mas Que Nada

  • 作曲: MENEZES JORGE LIMA
#ボサノバ#スタンダードジャズ
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Mas Que Nada - 楽譜サンプル

Mas Que Nada|歌詞の意味と歴史

基本情報

「Mas Que Nada」は1963年にブラジルのシンガーソングライター、ジョルジ・ベン(後のJorge Ben Jor)が発表した代表曲。原題表記は「Mas, que nada!」。作曲はMENEZES JORGE LIMA。ジャンルはサンバとボサ・ノヴァの間に位置し、軽快なバトゥカーダ風リズムと呼応するコーラスが特徴。初出はアルバム『Samba Esquema Novo』で、ポルトガル語歌唱の楽曲として知られる。

歌詞のテーマと意味

タイトルの「Mas que nada」はブラジル口語で「とんでもない」「いやいや、そうじゃない」といった軽い否定の間投詞。歌詞全体は、仲間と集ってサンバを奏でに行く高揚感と、音楽がもたらす解放感を描く。具体的な物語性よりも、躍動するリズムと言葉遊び、コール&レスポンス的な掛け声で場の熱気を喚起する構造になっている。ネガティブな現実を嘆くのではなく、アフロ・ブラジル文化への誇りと明るい自己肯定を祝福するトーンが貫かれている。

歴史的背景

1960年代前半のリオでは、ボサ・ノヴァの国際的成功を背景に、サンバの伝統とポップ感覚の融合が進展していた。本曲はその潮流を象徴し、パンデイロやドラムの躍動、ギターのシンコペーション、短い反復フレーズで観客を巻き込む革新性を示した。1966年にはセルジオ・メンデス&ブラジル’66が取り上げ、英語圏でもヒット。ブラジル音楽が世界のポップ・シーンへ浸透する契機のひとつとなった。

有名な演奏・映画での使用

最も広く知られるのはセルジオ・メンデス&ブラジル’66(1966)の洗練されたアレンジ。さらに2006年、セルジオ・メンデスがThe Black Eyed Peasを迎えた新版を発表し、クラブ/ポップ文脈で再評価が進んだ(アルバム『Timeless』収録)。ジョルジ・ベン自身のオリジナルも今なお定番で、ライブのキラーナンバーとして愛され続けている。映画での具体的使用作品名は情報不明。

現代における評価と影響

「Mas Que Nada」は世界のジャズ/ラテン系レパートリーに定着し、ビッグバンドや合唱、吹奏楽の編曲も多数存在する。ダンスフロアからコンサートホールまで文脈を横断できる稀有な楽曲であり、入門曲でありながら常に新鮮に響く普遍性を備える。短い反復による強力なフック、コール&レスポンス、シンプルな和声進行は、現代ポップやEDMの構築法にも通じ、世代を超えて影響を与え続けている。

まとめ

軽やかな一言から始まるこの名曲は、サンバの生命力と都市的洗練を両立させ、半世紀以上にわたり国境を越えて愛されてきた。オリジナルと名カバーを聴き比べれば、リズム、アレンジ、発語のニュアンスがもたらす豊かな表情の違いを体感できるはずだ。