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Cabaret

  • 作曲: COSSON JEAN CLAUDE,EBB FRED,KANDER JOHN
#スタンダードジャズ
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Cabaret - 楽譜サンプル

Cabaret|歌詞の意味と歴史

基本情報

「Cabaret」は、1966年初演のブロードウェイ・ミュージカル『キャバレー』に登場する代表曲。作曲はジョン・カンダー、作詞はフレッド・エブ。物語の舞台はワイマール期末期のベルリン、曲は主人公サリー・ボウルズが終盤で歌い上げるナンバーとして知られます。入力にある作曲者表記にはCOSSON JEAN CLAUDE, EBB FRED, KANDER JOHNが含まれますが、Jean Claude Cossonのクレジットの詳細は情報不明。原曲は英語で発表され、多くのキャスト録音と翻訳版が存在します。

歌詞のテーマと意味

タイトルが示す「キャバレー」は、享楽と自由の象徴として提示されますが、歌の核心は現実逃避と自己肯定の緊張関係にあります。表向きは明るく景気よい口調で“人生は華やかなステージ”と謳い上げつつ、物語上は現実の孤独や不安、社会の暗転を反射するアイロニーが強く働きます。サリーが自らの選択を正当化するかのように歌うことで、聴き手は快楽主義の魅力と代償を同時に感じ取る仕掛けになっており、表面の高揚感と内面の空洞が二重写しになります。

歴史的背景

ワイマール共和国末期のベルリンは、前衛芸術と退廃的享楽が共存した都市文化の坩堝でした。作品『キャバレー』は、台頭する全体主義と享楽の熱気がせめぎ合う時代精神を照射し、その中で「Cabaret」は輝きと影のコントラストを凝縮する役割を担います。1966年の初演はブロードウェイで大きな成功を収め、のちのリバイバル上演でも本曲は物語の転回点を担うキー・ナンバーとして位置づけられ、解釈の変遷とともに演出面でも多層化していきました。

有名な演奏・映画での使用

1972年の映画『キャバレー』(監督ボブ・フォッシー)で、ライザ・ミネリが披露した「Cabaret」は決定版として広く知られ、世界的な認知を押し上げました。舞台版のオリジナル・キャスト録音や後年のブロードウェイ/ウエストエンドのリバイバル盤でも、サリー役による解釈の違いが聴きどころ。日本を含む各国の翻訳上演でも重要曲として演奏され、演者のキャラクター作り、演出の思想を象徴する“看板曲”として扱われています。

現代における評価と影響

「Cabaret」はショー・チューンの定番として、リサイタルやオーディションで頻繁に選ばれるレパートリーです。外面的には華やかなブラスやショー的テンポ感と合唱的盛り上がりを備えつつ、内面的には選択の代償と社会状況の陰りを示唆するため、演者の演技力と解釈力が試されます。映画版の成功も相まって、曲自体が『キャバレー』のアイコンとなり、ポピュラー音楽と演劇の交差点における表現の可能性を示した作品として評価されています。

まとめ

「Cabaret」は、快楽的な表層と時代の暗雲を重ねるアイロニカルな名曲。物語の核を担い、演出や歌い手の解釈で多彩に変貌する柔軟性を持ちます。1966年の初演以来、舞台と映画の双方で受容を広げ、今日ではショー・チューンのスタンダードとして確固たる地位を確立。作曲ジョン・カンダー、作詞フレッド・エブによる緻密なドラマトゥルギーが、現代でも新鮮な問いを投げかけ続けています。