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Man That Got Away

  • 作曲: ARLEN HAROLD
#スタンダードジャズ
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Man That Got Away - 楽譜サンプル

Man That Got Away|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Man That Got Away」は、Harold Arlen作曲、Ira Gershwin作詞による楽曲で、1954年公開の映画『スター誕生』(監督ジョージ・キューカー)でジュディ・ガーランドが披露したことで知られる。英題は一般に“The Man That Got Away”。劇中の重要なシーンを担い、同年のアカデミー賞歌曲賞にノミネート。以後はジャズ・クラブやコンサートで広く歌われ、現在ではグレイト・アメリカン・ソングブックを代表するスタンダードとして定着している。

音楽的特徴と演奏スタイル

音楽的には、哀切さと昂揚が同居するトーチ・ソングの典型。ブルージーな和声感と陰影に富むメロディが特徴で、歌手はルバートを活かした語り口から、クライマックスでの力強いベルトへとダイナミクスを大きく取ることが多い。バラード〜ミディアムのテンポ設定が一般的で、ピアノ・トリオやビッグバンド、ストリングスを加えた編成まで、多彩なアレンジに耐える懐の深さをもつ。

歴史的背景

本作は、ガーランドの本格的復帰作として位置づけられた『スター誕生』のために書き下ろされた。長年ブロードウェイとハリウッドで活躍してきたアーレンと、アイラ・ガーシュウィンのコンビによるコラボレーションは、物語の挫折と再起というテーマに呼応。クラブでの演奏シーンは、照明とカメラの緊張感の中で感情が爆発していく演出が印象的で、映画音楽史に残る名場面として語り継がれている。

有名な演奏・録音

決定版としてまず挙げられるのは、ジュディ・ガーランドの映画版と関連録音である。彼女の劇的な表現は基準点となり、その後の解釈に大きな影響を与えた。エラ・フィッツジェラルドは『Harold Arlen Song Book』でこの曲を洗練されたスウィングへ昇華し、スタンダード化を後押し。以降、多数のジャズ・ヴォーカリストやピアニストがレパートリーに取り入れ、ライブでも頻繁に取り上げられている。

現代における評価と影響

今日では、映画発の名曲がジャズ・スタンダードとして生き続ける好例として評価される。歌詞の普遍性とドラマ性は、オーディションやリサイタルにも適し、解釈の自由度が学習・実演の双方で重宝される要因となっている。また、アーレンの作曲術を学ぶうえで、旋律と和声の緊密な連携を体感できる教材的価値も高い。

まとめ

「Man That Got Away」は、失われた恋を悼む心情を、映画的スケールとジャズの語法で描き切った一曲である。誕生の文脈と舞台を離れても、そのメロディと感情のカタルシスは色あせない。名演の蓄積が解釈の幅を広げ、これからもシンガーとリスナーを惹きつけ続けるだろう。