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The Nearness Of You

  • 作曲: CARMICHAEL HOAGY
#スイング#スタンダードジャズ
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The Nearness Of You - 楽譜サンプル

The Nearness Of You|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「The Nearness Of You」は、作曲Hoagy Carmichael、作詞Ned Washingtonによるアメリカン・ソングブックを代表するバラード。1930年代後半に発表され、ジャズ界では世代を超えて演奏されるスタンダードとして定着している。親密さや寄り添う感覚を繊細に描いた歌詞を持ち、スローからミディアム・スローのテンポで、ボーカル曲としてもインストとしても愛奏される。原曲のキーや初演詳細は版やアレンジで異なるため一定しないが、いずれの版でも旋律の流麗さと和声の豊かさが核にある。

音楽的特徴と演奏スタイル

一般にAABAの32小節形式で演奏され、Aセクションに滑らかなステップモーションと適度な跳躍、Bセクションに和声的コントラストが配される。メジャー調を基調に、メジャー7thや9th、13thといったテンションが生む柔らかな響きが魅力。前奏はルバートで始め、ピアノの分散和音やサスティンを活かしてから、レイドバックしたボールズに入る手法が定番。リハーモナイズではセカンダリー・ドミナントやトライトーン・サブを控えめに用い、メロディの可憐さを損なわない設計が好まれる。デュオ(声+ピアノ)、小編成コンボ、ストリングス入りのビッグバンドまで器楽編成を問わず映える。

歴史的背景

ビッグバンド全盛期に広がり、やがてポピュラー歌手とジャズ奏者の双方が取り上げる架け橋的レパートリーとなった。戦前から戦後にかけてのダンスホール文化やラジオ放送を通じて浸透し、ロマンティックなバラードの典型として位置づけられるようになる。映画での初出や特定の舞台作品との直接的関連は情報不明だが、スタンダード化の過程で多様なアレンジが生まれ、教育現場でも表現力やバラード・タイムの学習教材として重用されてきた。

有名な演奏・録音

グレン・ミラー楽団によるヒットは普及に大きく貢献。ボーカルではフランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、ナット・キング・コール、サラ・ヴォーン、ノラ・ジョーンズなどが名演を残している。器楽ではチェット・ベイカーやスタン・ゲッツらのリリカルな解釈が知られ、ピアノ・トリオやギター・デュオでも定番レパートリー。年代やスタイルを問わず録音が継続されており、各アーティストがテンポ、キー、イントロ処理で個性を示す。

現代における評価と影響

現在もセッションで頻繁に取り上げられるバラードの筆頭格。歌詞の親密な語り口は現代のシンガーにも響き、配信時代にはミニマルな編成やローファイ質感のカバーも増加。理論面では滑らかなボイス・リーディングの教材として、実践面ではブレスやレガート、ダイナミクス設計の訓練曲として機能する。多様な解釈を受け止める器の大きさが評価の持続力を支えている。

まとめ

「The Nearness Of You」は、抒情的メロディと温かな和声が結晶したジャズ・スタンダード。ボーカルでもインストでも美点が際立ち、時代を超えて愛され続ける理由は、シンプルな素材に豊かな解釈の余白がある点にある。入門者の鑑賞にも、上級者の表現探求にも最適な一曲だ。