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My Heart Belongs To Daddy
- 作曲: PORTER COLE

My Heart Belongs To Daddy - 楽譜サンプル
My Heart Belongs To Daddy|楽曲の特徴と歴史
基本情報
My Heart Belongs To Daddy は、コール・ポーターが1938年のブロードウェイ・ミュージカル『Leave It to Me!』のために書いたナンバー。初演はメアリー・マーティンで、以後ジャズ・スタンダードとして親しまれている。作詞・作曲は同一人物で、舞台発のショー・チューンとしても位置づけられる。
音楽的特徴と演奏スタイル
辛口のウィットと語呂合わせを効かせた歌詞と、洒脱な和声進行が核。半音階的な動きや副属和音、転調を織り交ぜ、ボーカルは軽快なスウィングからラテン風アレンジまで幅広く合う。テンポは中速が定番だが、バラードやアップでも映え、器楽ソロのインプロビゼーションに十分な余白を持つ。言葉のリズムを生かすため、歌い手は発音のニュアンスと間の処理が重要となる。
歴史的背景
1930年代後半、都会的な諧謔で人気を博したポーターは、本曲でも当時の観客を惹きつける洒落たダブル・ミーニングを駆使。『Leave It to Me!』での成功はマーティンの出世作としても語られ、曲自体は戦後も「グレイト・アメリカン・ソングブック」の一角として歌い継がれてきた。舞台起源の華やかさと、ジャズ・シーンに適応する柔軟性が長命の要因である。
有名な演奏・録音
初演のメアリー・マーティンに続き、1956年のエラ・フィッツジェラルド『Sings the Cole Porter Song Book』の収録で決定版として認知が広がった。ジュリー・ロンドンの録音も広く知られる。映画では1960年の『Let’s Make Love』でマリリン・モンローが披露し、大衆的な知名度を高めた。以後、数多くのボーカリストが取り上げ、ピアノ・トリオなど器楽版も多数存在する。
現代における評価と影響
舞台起源ながら、今日ではジャズ・ボーカルの定番曲として教育現場やオーディションでも取り上げられる。言葉遊びの巧みさとコード運びの洗練は、編曲やリハーモナイズの好例として分析対象にもなり、キャバレー/クラブ・シーンでも息長く愛奏されている。ショー・チューンとジャズの架け橋としての価値が再評価され続けている。
まとめ
舞台に根ざした華やかさと、ジャズに適した和声・メロディの両立こそ本曲の強み。初演以来の歩みと多彩な名演が示す通り、My Heart Belongs To Daddy は、時代を超えて歌い継がれるショー・チューン兼ジャズ・スタンダードの代表格である。