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Night We Called It A Day
- 作曲: DENNIS MATT,ADAIR THOMAS M

Night We Called It A Day - 楽譜サンプル
Night We Called It A Day|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Night We Called It A Dayは、作曲家マット・デニスと作詞家トム・アデアによって1941年に発表されたバラード。アメリカン・ソングブックを代表する一曲として広く知られ、ジャズ・ヴォーカルやスモール・コンボのレパートリーに定着している。原詞は英語で、別れの夜を回想する物語性の高い歌詞が特徴。しっとりとした情感と、大人びたムードを湛えた旋律は、時代や編成を超えて多くの解釈を生んできた。
音楽的特徴と演奏スタイル
穏やかなテンポで演奏されることが多く、語り口のようなフレーズ運びが生きる作品。歌唱ではレガートと間合いの取り方が要となり、弱声から中音域のコントロール、語尾処理の繊細さが表現力を左右する。器楽ではブラシを用いたドラム、温かなアコースティック・ベース、テンションを活かしたピアノ・ヴォイシングが相性良い。ハーモニーの陰影を丁寧に描くアレンジが映え、イントロで自由なルバートを置く解釈もよく見られる。
歴史的背景
第二次世界大戦期直前から戦中へと移る不安定な空気の中、ラジオとダンスバンドが大衆娯楽を支えた時代に生まれた。デニス&アデアのコンビは都会的で洒脱な情緒を得意とし、本曲もその美点を体現。失恋や別れを苦味と品位をもって描く手つきは、1940年代ポピュラー歌曲の洗練を示す。やがてジャズ・ヴォーカルの成熟とともに評価を高め、戦後も継続的に録音が重ねられて標準曲として定着した。
有名な演奏・録音
フランク・シナトラが1942年の初期ソロ録音曲の一つとして取り上げ、広く知られる契機となった。また、ボブ・ディランが2015年のアルバム「Shadows in the Night」で取り上げ、楽曲の普遍性を現代に提示。ほかにも多くのジャズ歌手や器楽奏者が録音を残しており、バラードの名唱・名演の比較対象として頻繁に参照される。映画での顕著な使用例は情報不明。
現代における評価と影響
本曲はライブのセットでムードを切り替える“静の一曲”として重宝され、教育現場でも表現力や歌詞解釈を学ぶ教材として扱われることが多い。ストリーミング時代に入っても新録が途絶えず、編成を問わず成立する柔軟性が評価の要因。歌詞の語りとメロディの流麗さが、年代やジャンルの壁を越えて聴き手に届き、ジャズ・スタンダードの核に位置づけられ続けている。
まとめ
Night We Called It A Dayは、成熟した別れの情景を気品ある旋律で描いたバラードの定番。ヴォーカルは言葉運びと間、器楽はハーモニーの陰影を磨くことで魅力が際立つ。シナトラの初期録音からディランの再解釈に至るまで、多様な名演が作品の懐の深さを証明している。初めて触れる人にも、表現を探求する演奏家にも、長く付き合う価値のある名曲だ。