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How Do You Keep the Music Playing?

  • 作曲: LEGRAND MICHEL JEAN
#スタンダードジャズ
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How Do You Keep the Music Playing? - 楽譜サンプル

How Do You Keep the Music Playing?|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「How Do You Keep the Music Playing?」は、作曲家ミシェル・ルグランが手がけ、作詞はアラン・バーグマンとマリリン・バーグマンのコンビによるバラード。1982年の映画『Best Friends』の主題歌として発表され、翌年のアカデミー賞歌曲賞にノミネートされた。映画発の楽曲ながら、その後多くの歌手とジャズ・ミュージシャンに取り上げられ、現在ではジャズ・スタンダードとして定着している。愛と関係性の持続を“音楽”に喩える詩的なテーマが核にあり、コンサートやレコーディング、ボーカルコンペティションでも頻繁に選曲される。

音楽的特徴と演奏スタイル

ルグランらしい流麗で広い音域を要する旋律線と、半音階的な進行を含む豊かな和声が特徴。テンションを多用したハーモニーと転調が、感情の揺らぎを巧みに描く。テンポはスローバラードが基本で、イントロは自由なルバート、テーマで脈打つ4/4へ、ブリッジでダイナミクスを拡張する構成が好まれる。デュエット編成ではコール&レスポンスやハーモニー付与が効果的で、ジャズ・コンボからオーケストラ伴奏まで幅広く適応可能。終盤でキーを上げるアレンジはクライマックスを強調し、語り口を重視する歌唱と繊細なブレス・コントロールが求められる。

歴史的背景

1980年代初頭は映画音楽がポップスやジャズと密接に交差した時期で、本曲もその潮流の典型例。ルグランとバーグマン夫妻のコラボレーションは『The Windmills of Your Mind』『The Summer Knows』などで知られ、映画の枠を越えて歌い継がれる楽曲を生み出してきた。本曲は公開当時から評価を得て、映画発のバラードが“歌い継がれる標準曲”へ移行していくプロセスを示す重要作と位置づけられる。

有名な演奏・録音

初期の代表的録音として、映画サウンドトラックでのパティ・オースティン&ジェームス・イングラムのデュエットが挙げられる。ジャズ/ポップ双方の大物も取り上げており、フランク・シナトラ、トニー・ベネット(アレサ・フランクリンとのデュエット版も知られる)、バーブラ・ストライサンドなどが名唱を残した。ピアノ・トリオを基調にしたジャズ・アレンジや、ストリングスを伴う壮麗な編曲まで多彩で、歌手の表現力やレンジを示す“リトマス試験紙”的レパートリーとして定着している。

現代における評価と影響

本曲は、関係の成熟と継続を主題とする普遍性により、世代やジャンルを超えて演奏され続ける。ジャズ教育の現場では、長いフレーズ運び、モーダルな色合いと機能和声の共存、転調処理などを学ぶ教材として扱われることも多い。コンサートや記念公演のクライマックス曲としての需要も高く、映像・配信時代においてもカバーが増加。映画に端を発しつつ、スタンダードとしての生命力を保ち続けている点が評価の核心である。

まとめ

映画由来の抒情性、ルグランの高度な作曲技法、バーグマン夫妻の精緻な言葉が結晶した名バラード。名唱の蓄積がレパートリー価値を高め、今なお新たな解釈を生み続ける。歌詞の全文はここでは扱わないが、メッセージは“愛を持続させる営み”への静かな問いかけにある。スタンダードとしての格と、個々の表現者による更新性が同居する、稀有な一曲である。