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Ol' Man River

  • 作曲: KERN JEROME
#スタンダードジャズ#ジプシージャズ
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Ol' Man River - 楽譜サンプル

Ol' Man River|楽曲の特徴と歴史

基本情報

『Ol' Man River』は、ジェローム・カーン作曲、オスカー・ハマースタイン二世作詞。1927年のミュージカル『ショウ・ボート』で港湾労働者ジョーが歌う代表曲。初演はジュールズ・ブレッドソー、のちにポール・ロブソンの歌唱で世界的に知られた。舞台の枠を超えて録音・映像で広く流通し、スタンダード・ナンバーとして定着している。

音楽的特徴と演奏スタイル

ゆったりしたテンポと低音域を生かす旋律が核。川の流れを思わせる均質な脈動に、スピリチュアルやブルースの語法が重なる。ジャズではバラード主体だが、スウィング寄りの解釈や再ハーモナイズも盛ん。豊かなレガートと大きなダイナミクス、言葉の重みを支える深いブレス設計が表現の要点となる。器楽では歌心を重視した長いフレージングが映える。

歴史的背景

物語はミシシッピ川流域を背景に、人種差別や労働の苛酷さを描いた革新的作品。歌は、変わらず流れ続ける川と社会の不条理を対比する内容。初期歌詞には今日では不適切な語もあり、後年の上演や録音では改訂や言い換えが広く行われてきた。ロブソンは時代の変化に呼応して表現を調整し、歌をより能動的なメッセージへと高めたことでも知られる。

有名な演奏・録音

ロブソンは舞台・映画での堂々たる歌唱で決定版的存在。映像では1936年版『ショウ・ボート』、1951年版のウィリアム・ウォーフィールドも著名。スタジオ録音ではフランク・シナトラをはじめ、多くの歌手がレパートリーに採り上げ、ビッグバンド、管弦楽、ピアノトリオなど編成も多彩。初演者ジュールズ・ブレッドソーの系譜を受け継ぐ低声の名唱も多数残る。

現代における評価と影響

今日ではアメリカン・ソングブックを代表するスタンダードとして、教育現場やコンサートで頻繁に取り上げられる。同時に、歌詞表現の歴史的文脈への配慮が重視され、解説や言い換えを伴う上演が一般化。語りと歌の境界を行き来する物語性、ジャズ的再解釈の余地、社会史的意義が重層的な価値を与え、世代やジャンルを越えて継承されている。

まとめ

『Ol' Man River』は、ショー・チューンの枠を越えて受け継がれる楽曲であり、名演の系譜とともに解釈を更新し続ける。ジェローム・カーンの旋律美を生かしつつ時代背景を踏まえることが、今日の演奏者・聴き手にとって最良のアプローチ。音楽性と社会性が結びついた稀有なスタンダードとして、今後も長く演奏され続けるだろう。