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Oliloqui Valley
- 作曲: HANCOCK HERBIE

Oliloqui Valley - 楽譜サンプル
Oliloqui Valley|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Oliloqui Valleyは、ハービー・ハンコックが1964年にBlue Noteから発表したアルバム『Empyrean Isles』に収録されたオリジナル曲。編成はフレディ・ハバード(コルネット)、ハービー・ハンコック(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、トニー・ウィリアムス(ドラムス)のカルテット。作詞は存在せず器楽曲で、曲名の語源・由来は情報不明。録音はルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで行われ、プロデュースはアルフレッド・ライオン。
音楽的特徴と演奏スタイル
同曲はポスト・バップ期のハンコックらしいモーダル志向と、浮遊感のあるハーモニー設計が核。ベースの反復的な基盤と、ピアノのクォータル・ヴォイシングが生む曖昧な重力に、コルネットの鋭くも陰影に富む旋律が重なる。ドラムはシンコペーションとポリリズムで推進力を与え、各奏者のインタープレイが緊密に呼応。はっきりした歌メロよりも動機の展開と質感の変化で構築され、即興とフォームのバランスが巧妙に保たれている。
歴史的背景
1964年はハンコックがマイルス・デイヴィスのグループ在籍期にあたり、ハーモニーと言語感覚の刷新が急速に進んだ時期。『Empyrean Isles』は同年のBlue Noteを象徴する創造的なセッションの一つで、サックス不在の編成により音域の空白が生み出す余白が特徴となった。スタジオはニュージャージーのヴァン・ゲルダー・スタジオ。アルバム内で「Cantaloupe Island」が広く知られる一方、Oliloqui Valleyはより深い調性的探求を担う楽曲として位置づけられる。
有名な演奏・録音
最も知られるのは『Empyrean Isles』でのオリジナル録音。ハバードのコルネットがもたらす独特の色彩、カーターとウィリアムスの柔軟なリズム設計、ハンコックの鋭敏なヴォイシングが結晶したテイクである。以降も再発やリマスターにより入手性は高く、ストリーミングでも容易に聴取可能。作曲者自身によるライヴでの再演はあるが、網羅的な公的ディスコグラフィに基づく詳細一覧は情報不明。
現代における評価と影響
本曲は派手さこそ控えめだが、ポスト・バップ以降の和声語法、動機労作、アンサンブルのダイナミクス設計を学ぶ上で示唆に富む。ハンコックの1960年代中期の創作姿勢を象徴する一例として研究対象となり、同時代のBlue Note作品とともに今日も参照点であり続ける。特にコルネットという選択が生む音色の密度と、ピアノの空間設計の巧みさは、編成設計やサウンド・プロダクションの観点からも評価が高い。
まとめ
Oliloqui Valleyは、ハービー・ハンコックの作曲家・ピアニストとしての成熟を示す器楽曲であり、『Empyrean Isles』の叙情と実験性を体現する重要トラック。明確な旋律主導ではなく質感とモードの推移でドラマを描き、カルテットの相互作用が核心を成す。初めて聴くならオリジナル録音が最適で、アルバム全体の流れの中で本曲の役割が一層明瞭になる。曲名の由来は情報不明だが、その神秘性も作品の魅力の一部と言える。