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One For My Baby

  • 作曲: ARLEN HAROLD,KOEHLER TED
#スタンダードジャズ
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One For My Baby - 楽譜サンプル

One For My Baby|楽曲の特徴と歴史

基本情報

正式タイトルは「One for My Baby (and One More for the Road)」。作曲はハロルド・アーレン、作詞はジョニー・マーサー。初出は1943年のハリウッド映画“The Sky’s the Limit”で、主演のフレッド・アステアが歌ったことで知られる(邦題は情報不明)。以後、アメリカン・ソングブックを代表するジャズ・スタンダードとして定着し、多くの歌手やジャズ奏者にカバーされている。

音楽的特徴と演奏スタイル

ゆったりしたテンポと語り口調のメロディが特徴のバラードで、夜更けのバーでバーテンダーに語りかける独白のムードを音楽的に支える。歌い手はフレーズ間に間を取り、弱声から低音域を活かす表現が好まれる。ピアノ弾き語りやピアノ・トリオの伴奏が定番だが、ビッグバンドのしっとりしたアレンジにも相性が良い。前奏で自由なルバートを置いてから本編に入る構成や、フェイド感のあるコーダで余韻を残す終わり方もしばしば採られる。

歴史的背景

第二次大戦期のハリウッドで、アーレンとマーサーという名タッグが生んだ一曲。映画の一場面で、主人公の心情を“バーのカウンター越しの独白”として描く手法は、その後のポピュラー音楽における“サルーン・ソング”の典型となった。タイトルの“one more for the road”は、店じまい前の最後の一杯を意味する欧米の慣用句で、去りがたさと未練を凝縮した表現として広く知られるようになった。

有名な演奏・録音

初演のフレッド・アステアに続き、フランク・シナトラの深い解釈が決定版の一つとして評価される。エラ・フィッツジェラルドは“Harold Arlen Song Book”で洗練されたヴァージョンを残し、トニー・ベネットやレナ・ホーンら名唱家もレパートリーに加えた。器楽ではテナーサックスやトランペット、ピアノ・トリオによる深夜向けのバラード解釈が多く、クラブ・シーンでも定番曲として親しまれている。

現代における評価と影響

“夜更けの独白”という物語性と普遍的な失恋のテーマは時代を越えて共感を呼び、配信時代のプレイリストでも“ミッドナイト・ジャズ”の文脈で頻繁に選曲される。ヴォーカリストが表現力を磨く教材としても重宝され、音数を抑えた伴奏で言葉のニュアンスを届けるアプローチが受け継がれている。映画やドラマでの引用も多く、アメリカン・ソングブックの核として位置づけられている。

まとめ

One for My Babyは、失意と未練を酒場の情景に凝縮した名バラードであり、語り口と間合いが命のジャズ・スタンダード。映画発の一曲ながら、名歌手たちの解釈を通じて今日まで歌い継がれてきた。夜の静けさに寄り添う音楽として、今後も長く愛され続けるだろう。