I’m Just Wild About Harry
- 作曲: BLAKE EUBIE

I’m Just Wild About Harry - 楽譜サンプル
I’m Just Wild About Harry|楽曲の特徴と歴史
基本情報
1921年、ブロードウェイ・ミュージカル『Shuffle Along』の劇中曲として初演。作曲はEubie Blake、作詞はNoble Sissle。リリカルで覚えやすいコーラスを持つ歌曲で、その後ポピュラー/ジャズ双方のレパートリーに定着した。現在は「ジャズ・スタンダード」として広く認知され、ピアノ独奏からビッグバンドまで編成を問わず演奏される。
音楽的特徴と演奏スタイル
軽快なシンコペーションと跳ねるリズム感が核。明朗なメロディは歌唱でも器楽でも映え、ストライド・ピアノやスウィングの語法と好相性だ。テンポは中速〜速めが多く、ヴォーカルではコール&レスポンスやスキャットを交えたアレンジも定番。終止部に向けてブレイクや転調を挟み、観客の手拍子を誘うショウ・チューン的演出がしばしば採られる。
歴史的背景
『Shuffle Along』は、黒人作曲家・出演者による作品がブロードウェイで商業的成功を収めた画期として知られる。本曲は同作の人気を牽引し、ハーレム・ルネサンス以後の黒人音楽家の地位向上にも象徴的役割を果たした。さらに1948年のハリー・S・トルーマン米大統領選でキャンペーン・ソングとして用いられ、タイトルとの言葉遊びも相まって再び注目を集めた。
有名な演奏・録音
代表的録音としては、作曲者Eubie Blake自身のピアノ演奏が基準点となる。以後はダンス・バンド、スモール・グループ、ヴォーカリストらが数多く録音し、ショウ・メドレーやテレビ、アニメーションの引用でも親しまれてきた。特定の映画や番組名の網羅は情報不明だが、アメリカン・ソングブックの一角として世代を超えて演奏され続けている。
現代における評価と影響
今日、本曲は大学ジャズ科やコミュニティ・バンドの定番教材であり、親しみやすい旋律と歴史的意義の両面から選曲される。2016年には『Shuffle Along』の再検証公演が行われ、楽曲群の価値が再評価。本曲もアメリカ音楽史の転換点を示す作品として語られる機会が増えた。標準曲集や配信サイトでも安定した検索・再生を得ている。
まとめ
舞台で生まれ、ジャズの現場で鍛えられ、政治キャンペーンで大衆に浸透した希有なスタンダードが「I’m Just Wild About Harry」だ。単純明快で陽気、しかし背景には文化的変革の歴史がある。初学者にも熟練者にも開かれた名曲として、今後も多様な解釈とともに生き続けるだろう。