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It Had Better Be Tonight

THE PINK PANTHER

  • 作曲: MANCINI HENRY NICOLA
#洋楽ポップス#映画音楽
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It Had Better Be Tonight - 楽譜サンプル

It Had Better Be Tonight|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「It Had Better Be Tonight」は作曲家ヘンリー・マンシーニが映画『ピンクの豹(The Pink Panther)』(1963)のために書いた楽曲で、イタリア語版の題名は「Meglio stasera」。英語詞はジョニー・マーサー、イタリア語詞はフランコ・ミリアッチが担当した。映画内での歌唱に加え、サウンドトラックおよび後年の多数のカバーにより、ジャズ/ポピュラー領域で広く親しまれるレパートリーとなっている。歌詞の全文はここでは扱わないが、今夜という一瞬を逃すなという緊迫感とロマンティックな高揚を核にした内容である。

音楽的特徴と演奏スタイル

ラテンのフィールを基調としたスウィンギーなジャズ・ナンバーで、軽快なテンポ、印象的なホーン・リフ、シンコペーションが特徴。メロディはキャッチーでありながら巧みな和声進行に支えられ、ヴォーカルはコール&レスポンスやアドリブ的装飾を取り入れやすい。ビッグバンドではブラスの切れ味とパーカッションのドライブ感が映え、小編成ではギター/ピアノのカッティングとベースのグルーヴで洒脱な雰囲気を作る。ヴォーカル版だけでなくインストゥルメンタルでも成立し、スキャットやショート・ソロを差し込む構成も定番である。

歴史的背景

1963年公開の『ピンクの豹』は、同年のテーマ曲とともにマンシーニの名を一段と高めた。物語世界に自然に溶け込む“ダイジェティック”な歌として書かれ、国際市場を意識したイタリア語・英語の二言語展開がなされた点も同作の特色である。映画音楽の一曲がスタンダード化する典型例としてしばしば言及され、以後、コンサートやクラブ、テレビ番組等で独立したナンバーとして演奏される機会が増え、映画由来のポピュラー・ソングがジャズのレパートリーに編入される流れを後押しした。

有名な演奏・録音

映画本編ではフラン・ジェフリーズがイタリア語版「Meglio stasera」を歌唱。マンシーニ自身のオーケストラによるサウンドトラック録音も広く知られる。21世紀以降ではマイケル・ブーブレが2007年のアルバムで取り上げ、軽快なラテン・ジャズのアレンジで新たな聴衆に届いた。ほかにも多くのジャズ歌手やビッグバンドがレパートリーに加え、ヴォーカル・フィーチャー曲やショウ的なステージ・ナンバーとして定着している。個別のカバー数やチャート成績は情報不明だが、録音の蓄積は豊富である。

現代における評価と影響

本曲は、映画発の楽曲がジャズ・スタンダード化する成功例として評価される。耳に残る旋律とダンス可能なグルーヴは、コンサート・ホールからクラブ、イベントまで幅広い場で機能し、アレンジの自由度も高い。ヴォーカルの語り口やステージング次第で洒脱にも熱狂的にも演出でき、教育現場のアンサンブルでも取り上げられる。映画音楽とジャズ/ポップの架け橋として、今日もプログラムを彩る実用度の高い一曲と言える。

まとめ

「It Had Better Be Tonight」は、マンシーニの洗練と国際色を帯びた作詞陣の妙が結実したラテン・ジャズ系スタンダード。1963年の映画誕生ながら、録音と舞台での演奏を通じて今も生命力を保ち続ける。映画音楽ファンにもジャズ愛好家にも開かれた名曲として、歴史と現代的魅力の双方を体現している。