Pieces of Dreams (Little Boy Lost)
- 作曲: LEGRAND MICHEL JEAN

Pieces of Dreams (Little Boy Lost) - 楽譜サンプル
Pieces of Dreams (Little Boy Lost)|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Pieces of Dreams(Little Boy Lost)」は、ミシェル・ルグラン作曲、アラン&マリリン・バーグマン作詞のバラード。1970年公開の米映画『Pieces of Dreams』の主題歌として知られ、ジョニー・マティスの歌唱で広く認知された。タイトルの括弧にある“Little Boy Lost”は歌詞中の印象的なフレーズに由来し、出版譜や録音で併記される別名である。旋律と和声の美しさから、ポピュラーとジャズ双方の領域で親しまれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
穏やかなテンポのラブ・バラードで、流麗な主題に続いて滑らかな転調が現れ、ルグランらしい豊かなコード進行が感情の起伏を描く。長いレガート・ラインと繊細なダイナミクスが要で、歌唱ではブレス位置と語尾処理が表現の鍵となる。ジャズではルバートの序奏から4ビートへ移るアレンジや、ピアノ・トリオによる内声の再構成、サックスの柔らかなヴィブラートを活かす解釈が定番。終盤で半音階的に緊張を高め、フェルマータで静かに終える演奏も多い。
歴史的背景
ルグランとバーグマン夫妻のコラボレーションは映画音楽とジャズを橋渡ししてきたが、本曲もその系譜にある。映画の叙情的世界観を反映した詞と音楽は、公開当時からラウンジやクラブのレパートリーに浸透。シネマティックな質感とスタンダード的な歌心を併せ持つことで、スクリーンを離れてからも長く演奏され続けている。チャート成績や受賞歴は情報不明だが、歌手・演奏家の支持は厚い。
有名な演奏・録音
初演として知られるジョニー・マティスの録音は、オーケストラを伴い映画のムードを忠実に伝える代表例。ジャズ・ボーカルではサラ・ヴォーンがルグラン作品集で取り上げ、滑空するようなフレージングで楽曲の陰影を広げた。インストゥルメンタルではスタンリー・タレンタインがアルバムのタイトル曲として採用し、CTIサウンドならではの艶やかなアレンジで人気を博した。以降も多くの歌手や管楽器奏者が録音を重ね、レパートリーとして定着している。
現代における評価と影響
今日では“隠れた名曲”として取り上げられる機会が多く、ウェディングやコンサートのバラード枠、音大の実技試験・発表会レパートリーにも選ばれる。複雑すぎないが情感豊かな和声は、即興の余地を残しつつメロディの美点を損なわないため、編成やキー変更にも柔軟に適応する。教材やワークショップでの分析題材としても有用で、ルグラン流の色彩的ハーモニーを学ぶ入口となっている。
まとめ
映画発の楽曲でありながら、豊潤な旋律と転調美によってジャズ・スタンダードとしての生命力を獲得した一曲。歌でも器楽でも映える普遍性が魅力で、時代やシーンを越えて演奏され続けている。初演版とジャズ解釈を聴き比べれば、作品の本質と可塑性の両方がより鮮明に見えてくるはずだ。