あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

St. Elsewhere

  • 作曲: GRUSIN DAVE
#スタンダードジャズ
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

St. Elsewhere - 楽譜サンプル

St. Elsewhere|作品の特徴と歴史

基本情報

「St. Elsewhere」は、米作曲家デイヴ・グルーシン(Dave Grusin)が手がけたテレビドラマ『St. Elsewhere』のテーマ音楽である。NBCで1982年に放送が開始された医療ドラマの冒頭を飾る短いインストゥルメンタル曲として知られ、作詞者は存在しない(情報不明ではなく、基本的に歌詞はない)。初出年は1982年。グルーシンは映画・TV音楽とジャズ双方で評価を受ける作曲家で、本作もそのキャリアを代表するテレビテーマの一つに数えられる。

音楽的特徴と表現

グルーシン特有のジャズ/フュージョン的語法を背景に、静謐なテンポ、陰影を帯びた和声、簡潔で記憶に残る主旋律が緊密に構成されている。80年代らしいシンセサイザーや電気的な鍵盤の響きが中心となり、柔らかなアタックの音色と洗練されたコード・ヴォイシングが都会的な空気感を醸成。短い尺ながら、主題モチーフの配置や内声の滑らかな動きにより、温度感と緊張のバランスを保ちつつ、ヒューマンドラマの余韻とメランコリーを提示する。派手さを抑えた設計が、番組のリアリズムと人間関係の機微をうまく支える。

歴史的背景

1980年代初頭の米国プライムタイムでは、番組の個性を一瞬で提示する1分前後のテーマ曲が重視された。映画音楽でも活躍するグルーシンは当時すでに第一線で、本作では演奏家としての洗練とテレビ文脈に適した簡潔さを両立。『St. Elsewhere』は群像劇としての重厚さと社会的リアリティで評価され、そのトーンに寄り添う音楽設計が番組アイデンティティの確立に寄与した。賞歴などの細部は情報不明だが、テーマ自体の認知度は長期放送と再放送を通じて定着していく。

使用された映画・舞台(該当時)

本楽曲はテレビドラマ『St. Elsewhere』のオープニング・テーマとして使用された。放送時のクレジット映像に合わせた短縮版が番組の顔となり、視聴者の記憶に刻まれた。番組内の場面転換や予告編等で主題モチーフが用いられたかどうかは情報不明。後年にはテレビ音楽のコンピレーションやグルーシン関連の音源に収録される形で音資料が流通しており、番組を離れても単独で鑑賞される機会が生まれている。

現代における評価と影響

本曲は、80年代のテレビテーマにおける「簡潔で情緒豊かな設計」の好例としてしばしば参照される。ジャズ/ポップの語彙をTVフォーマットに凝縮し、過度な劇性よりも余韻と人間味を前面に出すアプローチは、後続の医療・群像ドラマ音楽にも通じる一つの基調を示した。Dave Grusinの作家性への入口としても評価が高く、ストリーミングや再放送、アーカイブ音源を通して新世代のリスナーにも再発見が進んでいる。

まとめ

「St. Elsewhere」は、短い尺にドラマの空気と情緒を凝縮したテレビ音楽の秀作である。陰影ある和声と洗練された音色設計、簡潔だが記憶性の高い旋律によって、番組の世界観を鮮やかに提示した。情報不明な細部を除けば、その価値は放送当時から現在に至るまで揺るがず、テレビ音楽史とDave Grusinの作曲美学を語る上で欠かせない作品といえる。