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Rockin' Chair

  • 作曲: CARMICHAEL HOAGY
#スタンダードジャズ
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Rockin' Chair - 楽譜サンプル

Rockin' Chair|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Rockin' Chair は、作曲家ホーギー・カーマイケルによる1929年の作品。作詞もカーマイケル自身で、アメリカン・ポピュラー音楽と初期ジャズの橋渡しをする代表的なジャズ・スタンダードとして知られる。歌詞は高齢の語り手による独白をユーモラスに描き、日常の倦怠と安らぎの間をたゆたう情感が核となる。初演や初出出版社の詳細は情報不明だが、1930年代以降に広く歌われ、今日までヴォーカル・ナンバーの定番として定着している。

音楽的特徴と演奏スタイル

スローからミディアム・スローのテンポで演奏されることが多く、しみじみとしたメロディにブルースの香気が漂う。ヴォーカルを中心に、トランペットやトロンボーンが応答するコール&レスポンスのアレンジが定番。和声はクラシックなポピュラー・ソングの語法を基盤に、ジャズ的な装飾やテンションを受け止める余地が大きく、歌手の間合いとブラスの語り口が表現の鍵となる。リズムは重心低めのスウィング感で、間を生かしたフレージングが求められる。

歴史的背景

1920年代末、ジャズがダンス・ミュージックから芸術的表現へと歩を進める過程で、カーマイケルは口ずさめる旋律とジャズの語法を融合させた作曲家として頭角を現した。Rockin' Chair はその流れの中で生まれ、ラジオやレコード市場の拡大とともに浸透。大恐慌期のアメリカにおいて、穏やかな諦観とユーモアを帯びた歌詞世界は聴衆の共感を呼び、スウィング時代に入る頃には標準レパートリーとして定着していった。

有名な演奏・録音

初期録音としては、1929年のホーギー・カーマイケル自身による音源が重要で、当時の名コルネット奏者ビクス・バイダーベックが参加したテイクがよく知られる。歌手ではミルドレッド・ベイリーが代表的で、この曲は彼女の代名詞となり「ロッキン・チェア・レディ」の異名を得た。また、ルイ・アームストロングとジャック・ティーガーデンによる掛け合いの名演はライヴの名物として長く親しまれ、楽曲のユーモアと温かみを決定づけた。映像作品での顕著な使用は情報不明。

現代における評価と影響

現在も多くのシンガーやトラディショナル志向のバンドに取り上げられ、バラードの語り口やブラスとの対話を学ぶ教材としても重宝される。スタンダード曲集への収載や配信サービスでの再評価により、新世代の奏者にも息長く受け継がれている。技巧の誇示ではなく「間」と温度感を重視する美学は、スウィング以降のヴォーカル・ジャズの基準を示す一曲として位置づけられている。

まとめ

Rockin' Chair は、カーマイケルの作家性とジャズの語りの妙を凝縮したスタンダード。ゆったりとした時間感覚、ユーモラスで人間味ある世界観、そして名手たちの解釈によって磨かれた演奏史が、その魅力を今なお支えている。初学者から愛好家まで、歌と管楽器の会話を味わえる名曲だ。