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Shangri-La

  • 作曲: MALNECK MAT,MAXWELL ROBERT
#スタンダードジャズ
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Shangri-La - 楽譜サンプル

Shangri-La|歌詞の意味と歴史

基本情報

Shangri-Laは、作曲家Matty MalneckとハーピストRobert Maxwellにより1946年に発表されたポピュラー・ソング。作詞はCarl Sigman。甘美なメロディとロマンティックな歌詞で広く親しまれ、のちに数多くの歌手・バンドにより取り上げられた。タイトルは理想郷を指す英語の一般名詞で、作品名にも象徴的な意味が込められている。ボーカル曲として知られる一方で、器楽編成でも映える構造を持つのが特徴である。

歌詞のテーマと意味

歌詞は、恋人と過ごす時間や抱擁の中に“現実を超えた楽園”を見いだすという比喩を中核に据える。架空の地名であるShangri-Laを、現実逃避ではなく心の安らぎの象徴として用い、日常から切り離された静謐さや永続性への希求を描く。具体的な物語展開よりも、情景と言葉の響きでムードを立ち上げるタイプの書法で、歌い手のニュアンスによって幸福感、憧憬、甘やかさなどの感情の重心が変化するのが魅力である。

歴史的背景

Shangri-Laという語は、ジェームズ・ヒルトンの小説『失われた地平線』(1933)に由来し、20世紀半ばには理想郷の代名詞として広く定着していた。戦後直後の1946年に生まれた本曲は、ラジオやダンスバンドのレパートリーを通じて広がり、トラディショナル・ポップ系統のスタンダードとして定位置を得ていく。メロディは穏やかで歌いやすく、テンポはバラードからミディアムまで柔軟に運用可能なため、編曲の自由度が高い点も普及を後押しした。

有名な演奏・映画での使用

代表的カバーとして、The Four Coins(1957)によるヒットが知られ、1969年にはThe Lettermenが洗練されたコーラス・ワークで再評価につなげた。作曲者でもあるRobert Maxwellは、ハープを中心としたインストゥルメンタル版でも人気を博し、楽曲の旋律美を際立たせている。その他にも多くの歌手が録音を残すが、特定の映画での顕著な使用は情報不明。テレビやラウンジ・シーンでの使用例はあるものの、網羅的な記録は情報不明である。

現代における評価と影響

今日では、トラディショナル・ポップからスムースなジャズ・バラードの文脈まで幅広く演奏され、結婚式やラウンジ・ステージの定番として生き続ける。旋律の親和性の高さから、コーラス編成や器楽アレンジにも適応し、過度な技巧よりも歌心と音色の美しさを重んじる解釈が支持されている。歴史的ヒットに支えられた知名度と、楽曲自体の普遍性が相まって、新規リスナーにも入りやすい“はじめてのスタンダード”として紹介されることも多い。

まとめ

理想郷のメタファーを恋愛の喜びに重ねた普遍的テーマと、耳に残る柔らかな旋律が時代を超えて愛される理由である。初出から半世紀以上を経ても、穏やかな夢見心地を呼び戻すスタンダードとして価値は揺るがない。入門者にはボーカル版とインスト版を聴き比べ、歌詞の情感と旋律の魅力の両面から味わうことを勧めたい。