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A Time For Love

  • 作曲: MANDEL JOHNNY
#スタンダードジャズ#ボサノバ
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A Time For Love - 楽譜サンプル

A Time For Love|楽曲の特徴と歴史

基本情報

A Time For Love は、作曲家ジョニー・マンデル(Johnny Mandel)が手がけたバラード。作詞はPaul Francis Websterで、1966年公開の映画『An American Dream』のために書かれました。映画由来の叙情的な旋律と洗練された和声が評価され、その後はジャズ・シーンで広く演奏されるスタンダードとして定着。声楽・器楽の両面でレパートリー化し、ピアノ・トリオやビッグバンド、シンガーと小編成伴奏など多彩な編成で親しまれています。

音楽的特徴と演奏スタイル

テンポはゆったりとしたバラードで、しなやかな長いフレーズが要。旋律は穏やかな高揚と沈静を繰り返し、内声の動きを活かしたリハーモナイズとも相性が良い設計です。調性は安定と推移を巧みに行き来し、柔らかなクロマチック進行や繊細なテンション使いが印象的。演奏面では、ルバート気味のイントロから歌(または主題)へ導入し、間合いを生かしたダイナミクス・コントロールが肝となります。フリューゲルホルンやブラシ・ワーク、ピアノのアルペジオなど、音色の温かさを前面に出したアレンジが好まれます。

歴史的背景

マンデルは映画音楽とポピュラー/ジャズの橋渡し役として知られ、本作も映画の文脈からジャズ・クラブへと活路を広げた代表例です。1960年代半ばは映画発のバラードがスタンダード化する潮流が強く、A Time For Love もその流れに乗って録音と演奏が重ねられました。映画という具体的な場面性を背負いながらも、普遍的な抒情性を備えていたことが、時代や編成を超えた継続的な人気につながっています。

有名な演奏・録音

ヴォーカル、インストゥルメンタルの双方で数多く録音が残されています。特に、トニー・ベネットがアルバムのタイトル曲として取り上げた録音は広く知られ、作品の普及に寄与しました。そのほか、ピアノ・トリオやギターとのデュオ、弦を伴うアレンジなど、編成の幅広さがディスコグラフィの特徴です。個々の名演の評価は時代や嗜好により幅がありますが、いずれも楽曲の柔軟な器楽適性と歌詞の情感を引き出す解釈が聴きどころです。

現代における評価と影響

今日では、ジャズ教育の現場やリサイタル、ホテル・ラウンジなどでも定番のバラードとして扱われています。メロディとハーモニーの親密な関係性は、表現力や音色のコントロールを磨く教材としても有効で、シンガーにとっては日本語・英語問わず解釈の幅を試せる楽曲です。配信時代にも多くの新録が続き、映像的なムードを生む楽曲としてプレイリストに採用されることも多く、世代を超えて聴かれています。

まとめ

A Time For Love は、映画由来の叙情性とジャズの自由度が自然に溶け合った名バラードです。穏やかで奥行きあるハーモニー、余白を活かす歌心、編成に応じた多彩なアレンジ適性が長寿命の理由。初めて触れる人にも、深く掘り下げたい演奏家にも、豊かな発見を与えてくれる一曲と言えるでしょう。