Sleepin' Bee
- 作曲: ARLEN HAROLD

Sleepin' Bee - 楽譜サンプル
Sleepin' Bee|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Sleepin' Bee(原題は“A Sleepin' Bee”としても知られる)は、作曲家ハロルド・アーレンが手がけた抒情的なスタンダード。作詞は作家トルーマン・カポーティによる。初出は1954年ブロードウェイのミュージカル『House of Flowers』で、同作に含まれた楽曲として世に出た。初演時の具体的な歌い手・配役は情報不明だが、のちに多くの歌手・ジャズミュージシャンに取り上げられ、舞台の枠を超えて普遍的なレパートリーへと成長した。
音楽的特徴と演奏スタイル
アーレン特有のブルース感と洗練された旋律線が同居し、柔らかなハーモニー進行が歌詞の叙情を支える。穏やかな立ち上がりから内声の動きで色合いを変え、終止に向けて微妙な陰影を描く設計が魅力。テンポはバラードからミディアムまで幅広く、歌ものとしても器楽ジャズとしても成立する。ボーカルでは言葉の母音を活かしたレガートが効果的で、インストでは内声のガイドトーンを追う即興が機能しやすい。キーは演者に合わせて移調されることが多く、ダイナミクスの緩急が聴きどころとなる。
歴史的背景
『House of Flowers』はカリブの島を舞台にしたロマンティックな物語で、カポーティがブロードウェイに携わった稀少な例として知られる。舞台作品自体の上演期間や評価に関する詳細は情報不明だが、Sleepin' Beeは公演の寿命を超えて単独で歌い継がれた。戦後アメリカのショー・チューンからジャズ・スタンダードへと転化していく流れの中で、同曲はその典型として受容され、クラブやレコーディングでの定着を通じて広く認知を獲得した。
有名な演奏・録音
バーブラ・ストライサンドは1963年のデビュー作『The Barbra Streisand Album』に収録し、豊かなフレージングで曲の叙情を印象づけた。ビル・エヴァンス・トリオもアルバム『Trio 64』で取り上げ、内省的かつ透明感のあるヴォイシングで再解釈している。これらの演奏は、ボーカル曲としての魅力とモダン・ジャズの語法に耐えうる和声骨格の両面を示す好例となった。ほかにも多くの歌手・器楽奏者がレパートリーとして録音しているが、網羅的な一覧は情報不明である。
現代における評価と影響
今日では、クラブやコンサートでの選曲に加え、音大やワークショップのレパートリーにも取り上げられることがある。歌手にとっては日本語訳詞が流通していない場合も多く、原語でのディクションとストーリーテリングが評価の鍵となる。インスト奏者にとっては、メロディを損なわないアドリブ展開や、ハーモニーの色彩変化を丁寧に描く伴奏設計が求められる。こうした実践的な学習価値を持つ点も、スタンダードとしての寿命を延ばしている要因だ。
まとめ
Sleepin' Beeは、ショー・チューン由来の親しみやすさと、ジャズ的即興に耐える和声の深みを兼備した一曲である。1954年の初出から現在まで、多様な解釈を受け入れつつ生き続けてきた。丁寧な言葉運びと音色のコントロールを通じ、ささやくようなロマンティシズムを描ける点が最大の魅力と言える。出自や初演の細部に情報不明な部分は残るものの、名演の蓄積がその価値を十分に裏づけている。