The Cars
Drive
- 作曲: OCASEK RIC,OTCASEK RICHARD T

Drive - 楽譜サンプル
Drive|歌詞の意味と歴史
基本情報
米ロック・バンドThe Carsのバラード「Drive」は、作詞作曲をRic Ocasekが担当し、リード・ヴォーカルはベンジャミン・オール。1984年のアルバム『Heartbeat City』に収録され、ロバート・ジョン“マット”・ラングがプロデュース。シングルは全米Billboard Hot 100で3位のヒットを記録し、バンドの代表曲として広く知られる。冷ややかなシンセと端正なメロディが、同時代のニュー・ウェイヴ文脈における洗練を象徴する一曲だ。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、自己破壊的な行動に走りがちな相手を心配し、夜道の帰路を誰が守るのかを問いかける視点で描かれる。直接的な説教ではなく、静かな慈愛と無力感が交錯する語り口が特徴。繰り返される呼びかけは依存と支え合いの微妙な均衡を示し、冷ややかなサウンドの質感と相まって孤独、保護、距離感といった情感を際立たせる。オールの柔らかな声色が、楽曲全体に親密な陰影を与えている。
歴史的背景
1980年代半ば、MTVの台頭とレコーディング技術の進化により、ロックはシンセ主導の洗練へとシフト。『Heartbeat City』期のThe Carsはその潮流の最前線におり、「Drive」はギター主体のニュー・ウェイヴから一歩引いた、ミニマルで光沢のあるバラード像を提示した。硬質なリズム、透明度の高いパッド、抑制されたダイナミクスが、当時のプロダクション美学を体現している。
有名な演奏・映画での使用
ミュージック・ビデオは俳優ティモシー・ハットンが監督し、モデルのポーリナ・ポリツコヴァ(後にOcasekのパートナー)が出演。1985年のライヴ・エイドでは、エチオピア飢饉を伝える映像の背景曲として使用され、大会本編でもThe Carsが演奏したことで社会的認知が一気に拡大した。映画やドラマでの具体的な使用作品名は情報不明だが、映像文脈での想起性が高い楽曲として知られる。
現代における評価と影響
現在でも80年代バラードの金字塔として評価は高く、シンセ・ポップとロックの架橋を示す好例とされる。多くのアーティストにカバーされ、広告や番組での起用も継続。ベンジャミン・オールの穏やかな歌唱と克明なメロディは、過度な装飾に頼らないエモーションの表現法として参照され、ストリーミング時代にも安定した聴取が続く。ミニマルな編曲が持つ持続可能な普遍性を示した。
まとめ
「Drive」は、抑制された音像で親密な対話を描くThe Carsの到達点。私的な不安と公共の記憶(ライヴ・エイド)を結ぶ象徴曲でもあり、ポップが感情の陰影をいかに精緻に描けるかを示した。時代性と普遍性を併せ持つ名バラードとして、今なお鮮度を保ち続けている。