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Angry

  • 作曲: CASSARD JULES,BRUNIES HENRY,BRUNIES MERRITT,MECUM DUDLEY
#ジプシージャズ#スタンダードジャズ
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Angry - 楽譜サンプル

Angry|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Angryは、1925年に発表されたポピュラー・ソングで、ジャズ・スタンダードとして広く親しまれている。作曲はJules Cassard、Henry Brunies、Merritt Brunies、作詞はDudley Mecum。原曲は歌詞付きのダンス・チューンとして知られるが、後年は器楽曲としても定番化し、ディキシーランドからスウィング領域まで幅広い編成で演奏される。タイトルは直訳すれば「怒っている」だが、歌の内容は軽やかな恋の駆け引きをユーモラスに描くタイプで、深刻な怒りを描写するものではない。

音楽的特徴と演奏スタイル

明快で口ずさみやすい旋律線、シンプルな和声進行、軽快な2ビート/4ビートへ自在に行き来できるリズム感が特長。トラッド系の編成ではコルネット(またはトランペット)とクラリネット、トロンボーンのフロントがコール&レスポンスを展開し、間奏でのクラリネット・ランやトロンボーンのスライドが映える。テンポは中庸からアップテンポまで幅広く、ボーカル版では軽やかなスキャットや掛け合いが加わることも多い。アレンジ面では、イントロ後に主題を簡潔に提示し、短いソロ回しを重ねてエンディングでキメるクラブ向けの構成が定番である。

歴史的背景

1920年代半ばのダンスホール文化の活況の中で生まれた本曲は、ニューオーリンズにルーツを持つブリュニエス一家の名がクレジットされている点でも注目される。ラグタイムからスウィングへと時代が移る渦中にあって、踊りやすさと覚えやすさを両立したメロディは、劇場、ラジオ、社交場など多様な場で受け入れられた。出版直後から複数のダンス・バンドに取り上げられ、地域ごとの流儀で解釈されることで、のちのトラッド・ジャズ・レパートリーの礎を形作っていく。

有名な演奏・録音

初出年代に近い時期から、ボーカル入りとインストゥルメンタルの双方で数多く録音された。1920年代のダンス・バンドによるバージョンは当時の社交場の空気を色濃く伝え、戦後のトラッド・ジャズ再興期には小編成コンボが軽妙なスウィング感で再解釈。いずれの時代でも、短いソロ回しとシンガブルな主題が相性よく、レパートリーとして定着している。個別の代表録音の一覧は情報不明だが、年代や編成を問わず録音・演奏が継続している点は本曲の普遍性を裏づける。

現代における評価と影響

今日でもトラッド寄りのセッションやスウィング・ダンスの現場で頻繁に取り上げられ、初中級者のアンサンブル教材としても重宝される。旋律美とシンプルなフォームは、ソロ構築やアンサンブル・バランスの練習に適しており、聴き手にとっても分かりやすい入口となる。歌詞付き・器楽版の両立が可能なため、ライブの流れや会場の雰囲気に応じて柔軟なセットリストが組める点も評価が高い。

まとめ

Angryは、1925年発のダンス・ソングとしての親しみやすさと、ジャズ・スタンダードとしての拡張性を兼ね備えた一曲である。明快なメロディと軽快なスウィング感は、時代や編成を超えて魅力を放ち続け、歌ものとしても、インストとしても活きる。作曲者と作詞者の役割分担が明確で、歴史的な文脈の中で演奏解釈が豊かに育まれてきた点も見逃せない。今なお現場で息づく“使える”スタンダードとして、初心者からベテランまで幅広い層に支持されている。