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Black Bottom Stomp

  • 作曲: MORTON JELLY ROLL
#スタンダードジャズ#ジプシージャズ
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Black Bottom Stomp - 楽譜サンプル

Black Bottom Stomp|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Black Bottom Stompは、ジェリー・ロール・モートンが作曲し、1926年に自身のバンドによる録音で広く知られた早期ジャズの代表的インストゥルメンタル。78回転盤時代の規格に合わせた約3分前後の構成で、“ストンプ”の名が示すとおり躍動的なダンス・ナンバーとして設計された。編曲と即興が緊密に噛み合うため、ジャズ・スタンダードとして教育現場やリバイバル・バンドでも定番となっている。

音楽的特徴と演奏スタイル

リズムは2ビートを基調に、ピアノとバンジョー(あるいはギター)、ベース/チューバ、ドラムが推進力を生み、前列の管楽器がポリフォニックに絡む。マルチ・ストレイン型の構成で、アンサンブル・コーラスと短いソロ・コーラス、ブレイク、ストップタイムが巧みに配されるのが特徴。コール&レスポンスの書法と集団即興が交錯し、最後に高揚するシャウト的合奏で締める古典的展開は、ニューオーリンズ~シカゴ期ジャズの教科書的手本といえる。旋律・和声の難度は中程度だが、スイング感とダイナミクスの設計が成否を分ける。

歴史的背景

発表当時の米国ではダンス音楽の需要とレコード産業が拡大し、少人数編成のジャズ・コンボがシーンを牽引していた。モートンは即興だけでなく周到なアレンジを重視した先駆者で、本作もその理念を明快に示す。タイトルの“Black Bottom”は1920年代に流行したダンス名として知られ、作品は同時代のダンス文化と都市ジャズの活況を映す存在として語られることが多い。録音場所やセッションの詳細は諸説あるが、1926年のリリースで広く流通したことは確かだ。

有名な演奏・録音

最も重要なのは作曲者率いるバンドによる1926年の初期録音で、アンサンブルのキレとソロの配置が模範として参照され続けている。戦後のトラッド・ジャズ・リバイバル期以降も、多くのコンボがレパートリーに採用し、ジャズ史のアンソロジーや復刻盤で頻繁に紹介されてきた。近年は学生バンドやワークショップでも教材的に取り上げられる機会が多い。

現代における評価と影響

Black Bottom Stompは、作曲的設計と即興の共存を示す古典として高評価を得ており、アレンジの重要性を説いたモートンの美学を体感できる格好の題材である。管楽器の声部書法、ブレイクの置き方、合奏とソロのバランスは、その後のスイング期アレンジやコンボ・ジャズにも通じる基礎となった。録音技術や演奏環境が変化した現在でも、適切なテンポ設定、2ビートの着地感、フレーズの歌心を押さえれば、時代を超えて鮮度あるサウンドが立ち上がる。

まとめ

本作は、初期ジャズの核心である集団性と個人表現の調和を端的に示す一曲。ダンス音楽としての推進力と、作曲・編曲の巧みさが一体化した設計は、今日の演奏家にも多くの示唆を与える。まずはオリジナル録音を手掛かりに、構成とダイナミクスの妙味を体で覚えたい。