Clarinet Marmalade
- 作曲: EDWARDS EDWIN B,LA ROCCA D JAMES,RAGAS W H,RAGAS H W,SBARBARO ANTHONY,SHIELDS LARRY

Clarinet Marmalade - 楽譜サンプル
Clarinet Marmalade|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Clarinet Marmaladeは、ディキシーランド期を代表するジャズ・スタンダード。作曲者クレジットにはEDWARDS EDWIN B、LA ROCCA D JAMES、RAGAS W H(H Wとも表記)、SBARBARO ANTHONY、SHIELDS LARRYが並び、Original Dixieland Jass Band(ODJB)のメンバーが名を連ねる。初出年は情報不明だが、同バンドの初期録音で広く知られるようになった。器楽曲として親しまれ、クラリネットの華やかな役回りを前面に押し出すレパートリーとして定着している。
音楽的特徴と演奏スタイル
ラグタイム由来の多楽節フォームを基調に、軽快な2ビートとスイング前夜の推進力を持つ。主旋律はクラリネットが担い、トロンボーンのテールゲート風対旋律、コルネット(トランペット)のリード、リズム隊のストンピングなフィールが絡むニューオーリンズ様式のコレクティブ・インプロが聴きどころ。テンポは中速から速めが一般的で、ブレイクやストップタイムを生かしたコーラス展開、終盤に向けたアンサンブルの密度増加が典型的。クラリネットには明確なフレージングと粒立ちの良いタンギング、トリルや装飾音のコントロールが求められる。
歴史的背景
ODJBは1910年代後半に商業録音を通じてジャズを世界に広めた草創期のバンドで、本曲は同バンドの看板的レパートリーの一つとして浸透。作曲クレジットがバンド内の複数名にまたがる点は、当時の合議的なアンサンブル作法と、素材を共同で練り上げる制作慣行を反映している。クラリネットの妙技を象徴するタイトルどおり、同楽器の機動性と装飾性を活かす構図が初期ジャズの美学を体現している。
有名な演奏・録音
原点としてODJBの録音が挙げられるほか、Frankie Trumbauer and His Orchestra(Bix Beiderbecke参加)による1927年の録音は、洗練されたアレンジとソロの妙で高く評価される。以後、伝統派ジャズの定番となり、多くのディキシー/ニューオーリンズ系バンドがレパートリーに採用。ステージではクラリネットのショウケースとして配置されることが多い。
現代における評価と影響
今日でもトラディショナル・ジャズのセッションや教育現場で頻繁に取り上げられ、アンサンブル・バランス、コレクティブ・インプロ、2ビートのフィールを学ぶ教材曲として機能している。クラリネットのみならず管楽器全般の初期ジャズ語法を理解する手がかりとなり、レパートリーとしての生命力を保ち続けている。
まとめ
Clarinet Marmaladeは、クラリネットの華やかさとニューオーリンズ由来の合奏美学を凝縮した初期ジャズの要石。ODJBを起点に広がった名曲であり、歴史的価値と実演的な面白さを兼備する。伝統的スタイルを学ぶ上で欠かせない一曲だ。