Coquette
- 作曲: GREEN JOHN W (JOHNNY),LOMBARDO CARMEN

Coquette - 楽譜サンプル
Coquette|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Coquette は、作曲ジョニー・グリーンとカーメン・ロンバード、作詞ガス・カーンによる1928年発表の楽曲。ガイ・ロンバード楽団のレコードがヒットし、以後ジャズ/ダンス・バンドの定番となった。英語歌詞をもつが、器楽曲としても広く演奏される。タイトルは“気まぐれな小悪魔”ほどの意味で、洒脱で都会的なムードを備える。
音楽的特徴と演奏スタイル
4ビートのスウィングで取り上げられることが多く、テンポはミディアムを中心に、バラードや軽快なアップでも成立する汎用性がある。流麗な旋律線と明快な和声進行が即興を乗せやすく、ヴォーカルでは語尾の切り返しを生かした表情付け、器楽ではギターやクラリネットのシングルトーンがよく映える。コンボでもビッグバンドでもアレンジしやすく、コーラスを重ねたソロ回しやダイナミクス設計が行いやすい点も魅力だ。
歴史的背景
1920年代末のティン・パン・アレー最盛期に生まれ、ダンスホール文化の需要に応える洗練されたラヴ・ソングとして普及した。ジョニー・グリーンはのちに「Body and Soul」(1930)で名声を確立するが、本曲はそれ以前に作曲家としての感性を示した初期代表作の一つである。スウィング期の到来とともに、より多様な編成・テンポでの解釈が広がり、ヴォーカル曲でも器楽曲でも息長く演奏されてきた。
有名な演奏・録音
初期の決定的な録音として、Guy Lombardo and His Royal Canadians(1928)が挙げられる。続いて Louis Armstrong and His Orchestra(1929)が取り上げ、力強いヴォーカルとホーンの推進力で人気を押し広げた。さらに Django Reinhardt と Hot Club(1938)がギター主体の快演を残し、ジプシー・ジャズの重要レパートリーにも定着。時代や楽器編成を越えて、多様なアプローチが蓄積されている。
現代における評価と影響
今日でも小編成コンボからビッグバンドまで幅広く選ばれ、ギタリストやクラリネット奏者にとってはアーティキュレーションを磨く教材的曲目として重宝される。ヴォーカルでは軽やかな色気を求める場面に適し、スタンダード集の中で雰囲気を変える一曲として機能する。配信時代にも新録が途切れず、ジャム・セッションの現場でも取り上げられるなど、スタンダードとしての地位は揺るがない。
まとめ
端正なメロディ、柔軟なテンポ設定、そして時代を超える洒落たムード——「Coquette」はこれらを兼ね備えた普遍的スタンダードである。初期の名演から聴き始め、編成違いの解釈を聴き比べることで、曲の懐の深さとアレンジの自由度を体感できるだろう。