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Cornet Chop Suey

  • 作曲: ARMSTRONG LOUIS
#ジプシージャズ#スタンダードジャズ
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Cornet Chop Suey - 楽譜サンプル

Cornet Chop Suey|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Cornet Chop Suey は、ルイ・アームストロングが作曲したインストゥルメンタルのジャズ曲。初出は1926年、Louis Armstrong and His Hot Five 名義での録音で、Okehレコードから78回転盤として発売された。歌詞は存在せず、主役はコルネット(のちのトランペット)による独創的なソロである。タイトルの由来は情報不明。一般に“Chop Suey”は料理名として知られるが、楽曲との直接的関係は情報不明とするのが妥当である。アームストロングは本作で、当時の小編成コンボにおけるソロ表現の重要性を強く打ち出し、その後のジャズの方向性に影響を与えた。

音楽的特徴と演奏スタイル

最大の聴きどころは、いわゆるストップタイムに乗せたコルネット・ソロである。バンドが拍頭で短いコードを刻み、残りを休符として空間を作る中、アームストロングは切れ味のあるシンコペーション、三連系の装飾、強弱のコントラストを駆使して推進力を生む。音価の伸縮や前拍・後拍のずらしによりスウィング感を先取りし、フレーズ末尾のターンやブルーノートの用法が歌心を際立たせる。リズム・セクションは二拍子フィールを基調に、合いの手とブレイクでソロを引き立て、コール&レスポンス的な対話が形成される。アームストロングのソロは後年まで採譜の定番となり、即興語法の教科書的参照点として扱われている。

歴史的背景

1920年代半ば、アームストロングはシカゴでホット・ファイブ/セブン名義の録音を重ね、ニューオーリンズ流のアンサンブル中心から、ソリスト中心の近代ジャズへと潮目を変えた。本作はその転換期を象徴する一曲で、短い演奏時間でも強烈な個性を印象づける構成とソロの焦点化が顕著である。電気録音の普及が始まった時期とも重なり、音色やニュアンスの細部がより鮮明に記録されたことも、アームストロングの表現力を広く知らしめる追い風となった。

有名な演奏・録音

基準録音は1926年のLouis Armstrong and His Hot Five によるテイクで、現在も決定版として参照される。以降、トラディショナル寄りのコンボや教育現場での再現演奏が盛んで、トランペット/コルネット奏者の定番レパートリーとなっている。具体的な著名再演者の網羅的リストは情報不明だが、各種アンソロジーやアームストロング関連の復刻盤にたびたび収録され、研究と鑑賞の双方でアクセスしやすい録音史を持つ。

現代における評価と影響

Cornet Chop Suey は、ストップタイムの使い方、ブレイクの組み立て、拍感の前後で生む躍動など、ジャズ語法の基礎を学ぶ最良の教材として扱われる。トランペットのアーティキュレーションやフレージングの規範を提示し、スウィング以前からモダンへの連続性を実感させる点で教育的価値が高い。コンサートやフェスティバルでも取り上げられ、伝統的ジャズの魅力を示す入り口として機能し続けている。録音から一世紀近くを経ても、新鮮なエネルギーと説得力は失われていない。

まとめ

本作は、アームストロングがジャズの語法とソロ美学を確立した証左であり、短い尺の中にリズム、音色、間の妙を凝縮した重要作である。1926年の歴史的録音を起点に、学習・実演の両面で受け継がれてきた価値は大きい。歌詞を持たない純器楽曲ながら、語るように歌うフレージングは、今も演奏者と聴き手を魅了し続けている。