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Taste Of Honey
- 作曲: SCOTT BOBBY, MARLOW RIC

Taste Of Honey - 楽譜サンプル
Taste Of Honey|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Taste Of Honey は、Bobby Scott(作曲)とRic Marlow(作詞)による1960年発表の楽曲。シェイラ・デラニーの戯曲『蜜の味』のブロードウェイ版のために書かれ、器楽曲としても歌ものとしても広く親しまれている。短調の切なさと端正な旋律が特徴で、ジャンルを超えて演奏される定番曲だ。タイトルは原作の英題に由来し、演奏形態やテンポの選択によって多彩な表情を見せる。
音楽的特徴と演奏スタイル
哀愁を帯びた主題はシンプルながら記憶に残り、フレーズ間の余白を生かす表現が映える。テンポはバラード〜ミディアムで、ラテン寄りのグルーヴやスウィングへの置き換えも定番。和声進行は即興に適しており、前奏でのルバート、フリューゲルホルンやクラリネットの温かい音色、ピチカート風のベースなど編成の自由度が高い。ヴォーカルは語り口を重視したレガートが映え、インストでは主題の歌心を崩さない装飾的アプローチが好相性だ。
歴史的背景
原曲は1960年のブロードウェイ版『A Taste of Honey』のために書かれ、同時期のイギリス発“キッチン・シンク”的リアリズムの潮流とも接点を持つ。60年代前半にはアメリカのイージーリスニング/ジャズ界隈で急速に普及し、クラブやホテル・ラウンジの定番レパートリーとして浸透。やがてポップ・フィールドにも広がり、ステージや放送のBGMとしても重用された。舞台由来でありながら、独立した楽曲として普遍的な生命力を得た点が特徴的だ。
有名な演奏・録音
代表的な録音として、The Beatlesがデビュー作『Please Please Me』(1963)で披露した穏やかな歌唱版が知られる。さらにHerb Alpert & the Tijuana Brassの洒落たインストゥルメンタルも世界的なヒットとなり、ラテン風味のアレンジの雛形を提示した。以後、ジャズ・ヴォーカルや小編成コンボによる多彩な解釈が数多く残され、ライブ現場ではテンポやグルーヴの異なる複数バージョンがレパートリーとして共存している。
現代における評価と影響
今日でもセッションで取り上げられる機会が多く、初中級者が表現力と音色を磨く題材として重宝される。バラードの間合い、コード・ヴォイシング、音量のダイナミクスなど基礎を学ぶのに最適で、イベントBGMや映像音楽の場でも汎用性が高い。器楽と歌ものの両面で成立する稀有な“越境型スタンダード”として評価は確立しており、時代や編成を選ばずに新解釈が生まれ続けている。
まとめ
舞台由来のメロディを核に、ジャズからポップまで広く愛されるTaste Of Honey。キー設定、テンポ、グルーヴの選択で表情が大きく変わるため、目的のシーンに合わせたアレンジが肝要だ。名演の系譜を踏まえつつ、余白と歌心を大切に味わいたい。