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Maple Leaf Rag

  • 作曲: JOPLIN SCOTT
#ジプシージャズ#スタンダードジャズ
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Maple Leaf Rag - 楽譜サンプル

Maple Leaf Rag|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Maple Leaf Rag は、スコット・ジョプリンが作曲し1899年にStark社から出版されたラグタイムの代表作。歌詞は存在せず、主に独奏ピアノで演奏される。標準的なクラシック・ラグの形式(AABBACCDD)を備え、題名はジョプリンが活動したミズーリ州セダリアの社交クラブ「メイプル・リーフ・クラブ」に由来するとされる。明快な旋律線と整った和声進行、舞踏的なリズム感が相まって、同ジャンルの規範を示す一曲として広く認知されている。

音楽的特徴と演奏スタイル

右手は強いシンコペーションによる跳躍的な旋律、左手はベース音と和音を交互に刻む“オム・パッ”の伴奏が特徴。テンポは突進せず中庸を保ち、スウィングさせないストレートなリズムが要点。トリオでは調が変わり、主調から下属調へと色彩が明るくなる。明確なアーティキュレーション、左手の安定した二拍感、内声の和声進行を聴かせるバランスが演奏の鍵となる。各セクションのダイナミクス差をつけ、反復での語り口を工夫すると構成美が際立つ。

歴史的背景

19世紀末から20世紀初頭にかけて、ラグタイムは舞踏と娯楽の音楽として全米で流行した。1899年の本作の成功は、ジョプリンの名を広く知らしめ、出版楽譜を通じてラグタイムの語法を標準化する一因となった。セダリア周辺の黒人コミュニティに根差した実演文化と、シート・ミュージック産業の発展が、楽曲の普及を後押しした。やがてダンスホールや家庭のピアノでも愛奏され、地域音楽から全国的レパートリーへと拡大していく。

有名な演奏・録音

著名な録音としては、ラグタイム復興を牽引したジョシュア・リフキンのピアノ演奏が広く参照されるほか、ディック・ハイマンらジャズ/ラグの名手による録音も知られる。初期にはバンジョーや吹奏楽編曲での録音・公演も行われ、媒体や編成を越えて親しまれてきた。ジョプリン自身の録音の詳細は情報不明。時代や楽器により解釈は多様だが、リズムの直截さとフレーズの明瞭さを重視する点は共通している。

現代における評価と影響

本作はピアノ学習者の定番レパートリーであり、リズム読解と独立したタッチを鍛える教材として評価が高い。ジャズの直接のスウィング感とは異なるが、シンコペーションや形式面で後のポピュラー音楽に影響を与えたとされる。映画やテレビのBGM、テーマパークのショウなどでも耳にする機会が多く、その親しみやすい明晰さが時代を超えて支持されている。演奏会では、同じジョプリン作品や他のクラシック・ラグと組み合わせるプログラミングが定番化している。

まとめ

Maple Leaf Rag は、構成の明快さ、躍動するシンコペーション、堅固な和声運動が融合したラグタイムの到達点である。無理のないテンポでリズムを整え、各セクションのコントラストを明確に描けば、作品本来の輝きが伝わるだろう。史実の詳細に未確定な点はあるが、音楽的価値は揺るがない。入門者から上級者まで、時代と場面を越えて魅了し続ける不朽のスタンダードである。