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Memphis Blues (D. Shore)

  • 作曲: HANDY WILLIAM C
#ジプシージャズ#スタンダードジャズ
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Memphis Blues (D. Shore) - 楽譜サンプル

Memphis Blues (D. Shore)|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Memphis Blues (D. Shore) は、作曲者にHANDY WILLIAM C(W.C.ハンディ)が明記された楽曲で、初期ブルース/ジャズの重要曲として広く知られる。タイトル末尾の“(D. Shore)”表記は、歌手Dinah Shoreとの関連を示す可能性があるが、確定的な出典や版情報は情報不明。作詞者クレジットは資料により異動が見られ、統一的な一次情報は情報不明。出版年については1912年とする文献が多いが、ここでは確証となる一次資料が提示できないため詳細は情報不明とする。いずれにせよ、本曲は米国南部メンフィスの名を冠し、20世紀初頭のブルースがジャズ・レパートリーへ取り込まれていく過程を象徴する存在である。

音楽的特徴と演奏スタイル

本曲は、ブルース特有のブルーノートやコール&レスポンス的なフレーズ運びを備え、シンプルながら印象的な旋律線が即興を誘発する。リズムは二拍・四拍のスウィング感を軸に、行進曲/ラグタイム期の語法を引き継いだ整ったストレイン配置で演奏されることも多い。テンポは中庸から軽快まで幅があり、小編成コンボによるアドリブ・コーラスの応酬、ブラス主体のダンス・バンドによる華やかなアレンジ、ストライド~スウィング系ピアノのソロ演奏など、多様なスタイルに適応する。ヴォーカル版ではコーラス構成に合わせてコール&レスポンスやスキャットを交える解釈もみられる。

歴史的背景

W.C.ハンディは“ブルースの父”と称され、南部の民俗的要素を譜面化・出版流通させることで、ブルースを全米規模の大衆音楽へ押し上げた中心人物である。本曲は、メンフィスの地名を冠することから、同地の音楽文化やダンス・バンド需要と密接に結びついて普及したと考えられる。出版譜の流通とダンス・ホールを媒介に、ブラスや軍楽隊、ニューオーリンズ~シカゴ系ジャズの演奏家たちに取り上げられ、やがて“スタンダード”として定着していった。歌詞の扱いは版により異なり、器楽曲としても歌唱曲としても成立する可塑性が、長期的な命脈を支えている。

有名な演奏・録音

本曲は20世紀前半より多くのダンス・バンド、ジャズ・コンボ、ピアニスト、歌手によって録音・演奏されてきたが、網羅的なディスコグラフィーの確定情報は情報不明である。タイトル表記に関連して“D. Shore”がDinah Shoreを指す可能性はあるものの、当該バージョンの録音年・レーベル・編成などの一次的裏付けは情報不明。一般には、ブラス主体のアレンジやスウィング期のバンド編曲、さらにはソロ・ピアノや小編成ジャムでの定番レパートリーとして継承されており、各時代のスタイルを反映した多彩な録音が存在する。

現代における評価と影響

Memphis Bluesは、初期ブルースの語法をジャズ的な編曲・即興の枠組みへと橋渡しした歴史的曲目として評価され続けている。教育現場では、ブルース・フレーズ、コール&レスポンス、初期ジャズのアンサンブル・バランスを学ぶ教材として扱われることが多い。ステージでは、イントロや間奏に独自のブレイクやリフを挿入するアレンジが定番化し、地域のコミュニティ・バンドからプロのジャズ・オーケストラまで幅広く演奏される。楽曲の普遍的なフォームと親しみやすい旋律は、世代や編成を超えて活用される資質を今なお保っている。

まとめ

W.C.ハンディ作曲のMemphis Blues (D. Shore) は、ブルースのエッセンスをジャズ・アレンジに融和させ、20世紀大衆音楽の基盤を形作った重要曲である。作詞・特定版のクレジットや一部ディスコグラフィーには情報不明点が残るものの、器楽・歌唱の双方で演奏されてきた歴史と、即興を促す明快な構造は揺るがない。初学者にとってはブルース語法の入口として、中上級者にとっては表現の幅を示す素材として、今後もレパートリーの中核を占め続けるだろう。