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Minor Drag, The

  • 作曲: WALLER FATS,WALLER THOMAS FATS
#ジプシージャズ#スタンダードジャズ
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Minor Drag, The - 楽譜サンプル

Minor Drag, The|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Minor Drag, Theは、ファッツ・ウォーラーが作曲したインストゥルメンタルのジャズ作品。タイトルが示す通り短調(マイナー)のムードを持ち、ダンスにも適した推進力あるリズムで親しまれてきた。正式な初出年や初演の詳細は情報不明だが、ウォーラーの名刺代わりともいえるストライド・ピアノの語法が凝縮され、ピアノ独奏はもちろん小編成コンボでも取り上げられることが多い。

音楽的特徴と演奏スタイル

本曲の核は、左手がベース音と和音を大またぎで交互に鳴らすストライドの躍動感と、右手のシンコペーション豊かな旋律線の対比にある。マイナー特有の陰影がブルージーなフレーズと結びつき、軽快さと哀愁が同居する。テンポは中速から速めで演奏されることが多く、ブレイクやフィルの入れ方、右手の装飾(トリルやラン)で個性が際立つ。ソロ回しを前提にした構成が取りやすく、ピアノ・ソロに限らずリズム・セクションとホーンを加えたスモール・コンボでも映える。

歴史的背景

ウォーラーはハーレムに端を発するストライド・ピアノの旗手として知られ、作曲家・ピアニスト・オルガニストとして多作であった。レコードやピアノロール向けに器楽曲を数多く残し、本作もその系譜に位置づけられる。出版や権利表記の都合から、カタログでは“Minor Drag, The”と表記されることがある。初版出版社や制作経緯の詳細は情報不明だが、当時のダンス音楽とジャズの交差点に生まれたレパートリーとして、演奏現場で受け継がれてきた。

有名な演奏・録音

もっとも参照されるのは作曲者ファッツ・ウォーラー自身による録音で、ストライドの手本として後世に影響を与えた。その後もストライド系の名手やトラディショナル志向のバンドがレパートリーに加え、編集盤やオムニバスに収録される機会が多い。代表的録音の網羅的なリストや具体的な録音年の詳細は情報不明だが、テンポ設定、ブレイクの配置、エンディングの決めフレーズなど、演者ごとの解釈の違いを聴き比べる楽しさがある。

現代における評価と影響

本曲はストライド習得の教材としても価値が高く、左手の運指、右手のシンコペーション、マイナー・リックの語彙を学ぶ題材としてしばしば取り上げられる。セッションではイントロやエンディングの定型が共有され、編成に応じてリフの受け渡しやソロ配分を変える実践的アレンジが発達。伝統的なフィールを保ちつつ、モダンな和声処理やリズム解釈で再構築する試みも広がっている。

まとめ

Minor Drag, Theは、短調の哀愁と跳ねる推進力を併せ持つ、ファッツ・ウォーラー流ジャズの精髄。確定情報の乏しい点はあるものの、ストライドのダイナミズムと即興の自由度を体感できる定番曲として、今なお演奏家と聴衆の双方から厚い支持を集めている。入門者の教材にも、上級者の個性表現の舞台にもなり得る懐の深さが、本作の普遍的な魅力である。