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This Is New
- 作曲: WEILL KURT

This Is New - 楽譜サンプル
This Is New|楽曲の特徴と歴史
基本情報
This Is New は、作曲家クルト・ワイル(Kurt Weill/表記: WEILL KURT)が手がけた楽曲で、作詞はアイラ・ガーシュウィン。1941年のブロードウェイ・ミュージカル『レディ・イン・ザ・ダーク(Lady in the Dark)』のために書かれました。初出年は1941年、原詞は英語。舞台上での初演歌唱者や初演時の調性・形式の詳細は情報不明ですが、ショー・チューンとして誕生し、その後ジャズ・シーンで広く演奏されるようになったことで知られています。現在では、歌入り・インストゥルメンタルの双方で取り上げられるレパートリーです。
音楽的特徴と演奏スタイル
ワイル特有の半音階的な動きや、予期せぬ和声の転換が魅力で、旋律には欧州的なモダニズムの気配とブロードウェイ由来の歌心が同居します。ジャズ演奏では、歌詞の情感を活かすバラードから、抑制の利いたミディアム・スイングまで幅広いテンポ設定が見られます(代表的な慣行であり、決定的な標準テンポは情報不明)。和声進行はリハーモナイズの余地が大きく、アドリブでは内声の半音進行やテンション配置を活かすアプローチが効果的です。歌唱では、語尾のニュアンスとフレージングの間(ま)を丁寧に扱う解釈が好まれ、器楽では主題の陰影を保ちながらモーダル/機能和声を横断する発展が行われます。
歴史的背景
『レディ・イン・ザ・ダーク』は、モス・ハートの脚本、ワイルの音楽、アイラ・ガーシュウィンの詞による1941年のブロードウェイ作品。ドイツ出身のワイルは30年代に米国へ渡り、欧州音楽の語法とアメリカのショー・チューンを架橋しました。アイラ・ガーシュウィンは兄ジョージの没後も精力的に作詞活動を続け、本作でワイルと協働。本曲はそのコラボレーションの産物として、舞台文脈のドラマ性と、独自のハーモニー処理が結実した一曲です。戦中期のブロードウェイから生まれた楽曲が、その後のクラブ文化や録音産業を通じてジャズの定番曲へ広がっていく流れの一例といえます。
有名な演奏・録音
『レディ・イン・ザ・ダーク』関連の録音に加え、多数のジャズ歌手・器楽奏者が取り上げています。代表的・決定的な一枚の特定は情報不明ですが、ボーカル解釈とインスト解釈の双方でレパートリー化しており、編曲版も多岐にわたります。スタジオ録音・ライブ録音ともに実演機会が多く、リアルブック系の資料にも掲載されることがあるなど、セッション曲としても一定の浸透を見せています。ただし、版や編曲によってイントロ、間奏、エンディングの扱いは大きく異なります。
現代における評価と影響
This Is New は、ショー・チューン発の楽曲がジャズ・スタンダードへと転位する典型例として評価されます。和声語彙が豊富で、歌詞の情感と近代和声的な陰影が同居するため、教育現場でもボーカル表現・リハーモナイズ・アドリブの教材として有用です。また、ブロードウェイとジャズの相互浸透を示すレパートリーとして、プログラムの文脈づくりにも適しています。近年も再演や再録が続き、世代を超えて解釈が更新される「生きたスタンダード」として位置づけられています。
まとめ
1941年の舞台から生まれた This Is New は、ワイルとアイラ・ガーシュウィンの協働が生んだ、ドラマ性と洗練を兼ね備えた一曲。豊かな和声と言語表現により、歌・器楽の双方で魅力を放ち、今日ではジャズ・スタンダードとして確固たる地位を築いています。初演の細部や確定的な決定版録音は情報不明ながら、再解釈の余地の広さこそが本曲の強みであり、演奏者・聴き手の双方に新鮮な発見をもたらし続けています。