Oriental Strut
- 作曲: ST CYR JOHN A

Oriental Strut - 楽譜サンプル
Oriental Strut|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Oriental Strutは、ギタリスト/バンジョー奏者として知られるジョニー・セント・シア(Johnny St. Cyr/表記:ST CYR JOHN A)の作曲によるジャズ曲。歌詞を伴わないインストゥルメンタルとして演奏されるのが一般的で、1926年にルイ・アームストロング・アンド・ヒズ・ホット・ファイヴの録音で広く知られるようになった。初期ジャズ〜ニューオーリンズ/シカゴ期のレパートリーに位置づけられ、リズム面とアンサンブルの妙味が味わえる。
音楽的特徴と演奏スタイル
本曲は複数のストレイン(楽節)から成る1920年代ジャズ特有のフォームを持ち、フロントライン(コルネット/トランペット、クラリネット、トロンボーン)とバンジョー、ピアノ、ベース/チューバ、ドラムのアンサンブルが立体的に絡み合う。テンポは中速〜やや速めで、二拍子感の推進力が特徴。タイトルに示される“オリエンタル”風のニュアンスは当時流行したオリエンタリズムの名付け慣習に由来し、旋律自体はニューオーリンズ・スタイルの語法に根差している。ブレイクや短いソロの受け渡しが随所に配され、各奏者のフレージングを引き立てる。
歴史的背景
1920年代半ば、シカゴを中心に録音産業が活況を呈し、ホット・ファイヴはOkehレーベルを通じて数多くの名演を残した。Oriental Strutはその録音群の一角を占め、セント・シアの作曲家としての確かな手腕を示す一例となっている。ニューオーリンズ出身の音楽家たちがシカゴで花開かせたアンサンブル美学を、コンパクトなフォームの中に凝縮した点で、当時の時代精神をよく伝える。
有名な演奏・録音
最も代表的なのはルイ・アームストロング・アンド・ヒズ・ホット・ファイヴによる1926年の録音で、以後、伝統的ジャズを志向するバンドのレパートリーとして取り上げられてきた。クラリネットやトロンボーンのアドリブ運び、コルネットのリードに対するアンサンブルの呼応など、初期ジャズの教科書的な聴きどころが詰まっており、復刻盤やコンピレーションでも再評価の文脈で頻繁に紹介されている。
現代における評価と影響
Oriental Strutは、セント・シアの代表作として、トラディショナル・ジャズを学ぶ奏者にとっての重要レパートリーとなっている。アレンジの自由度が高く、少人数コンボでもブラス中心の編成でも成立するため、現代の演奏シーンでも実用性が高い。初期ジャズのアンサンブル構築法、ブレイクの扱い、リズムの推進力を体験的に学べる素材として評価され、研究・教育現場でも参照される機会が多い。
まとめ
ジョニー・セント・シア作曲のOriental Strutは、1920年代ジャズのエッセンスを凝縮したインストゥルメンタル曲であり、ホット・ファイヴの歴史的録音を通じて定着した。多層的なストレイン構成とアンサンブルの妙が魅力で、今日までトラディショナル・ジャズの重要曲として演奏され続けている。歌詞情報は存在せず、インストならではの構築美を味わえる一曲だ。