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Pearls, The

  • 作曲: MORTON FERDINAND JOSEPH,MORTON JELLY ROLL
#ジプシージャズ#スタンダードジャズ
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Pearls, The - 楽譜サンプル

Pearls, The|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「Pearls, The」は、ジェリー・ロール・モートン(本名:フェルディナンド・ジョセフ・モートン)による器楽曲で、歌詞は存在しません。ソロ・ピアノ曲として知られる一方、クラリネットやコルネット、トロンボーンを含む小編成ジャズ・アンサンブルでも頻繁に取り上げられ、ニューオーリンズからシカゴ期にかけての初期ジャズの語法を端的に示すレパートリーです。曲名表記は一般に“The Pearls”が用いられますが、正式な初出年や出版情報は情報不明です。

音楽的特徴と演奏スタイル

ラグタイム由来の多楽節構成(コントラストの明確な複数のストレイン)を基盤に、モートン特有の「スペインの香り(Spanish tinge)」と呼ばれるハバネラ系リズムを随所に織り込む点が特徴です。左手はオルタネイティング・ベースと和音の跳躍で推進力を作り、右手はブルーノートや装飾的なターン、半音階的パッセージで歌心を与えます。アンサンブル版では、ストップタイムのブレイク、コレクティブ・インプロヴィゼーション、コーラスごとの音色変化が効果的に使われ、作曲と即興の均衡がモートン流に設計されています。テンポ感やスウィングの度合いは編成と解釈により幅があります。

歴史的背景

モートンはジャズの初期において、即興だけでなく“作曲されたジャズ”の価値を強調した人物で、「Pearls, The」はその理念を体現する代表作の一つです。ニューオーリンズ由来の感性にシカゴ期の洗練が加わった1920年代の気分を色濃く反映し、録音技術の発達とともに広く聴衆に届きました。初録音の具体的日時や出版年は情報不明ですが、モートンの黄金期に位置づけられ、後続のピアニストや編曲家に強い影響を与えています。

有名な演奏・録音

最も重要なのは作曲者本人によるピアノ独奏および自身のアンサンブルによる録音で、楽曲の設計と演奏美学を直接確認できます。これらは各種復刻盤やデジタル配信で入手可能です。その後、伝統派ジャズ・バンドやクラシカルな手法を持つピアニストによって数多く再演され、ソロ版とコンボ版の両面からレパートリーとして定着しました。特定の映画への使用情報は情報不明です。

現代における評価と影響

「Pearls, The」は初期ジャズの文脈を学ぶ上での必修曲とされ、音楽大学やワークショップで分析・採譜の素材として扱われます。多楽節構成、ハバネラの導入、作曲と即興の有機的結合は、ラグタイムからスウィング以前のジャズへと至る様式的架け橋として重要視されています。演奏家にとっては、左手の駆動力と右手の歌心、アンサンブルでは対位的な絡みとダイナミクス設計が試される実践的な教材でもあります。

まとめ

「Pearls, The」は、モートンの作曲理念と初期ジャズの美学を凝縮した器楽名作です。多楽節の構成美、スペインの香り、作曲と即興の高度な調和により、ソロでもアンサンブルでも映える普遍性を獲得しました。録音・出版年など一部情報は情報不明ながら、歴史的価値と演奏的魅力は揺るぎません。初期ジャズの核心に触れたいリスナーとプレイヤーにとって必聴・必修の一曲です。