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Tricotism

  • 作曲: PETTIFORD OSCAR
#スタンダードジャズ
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Tricotism - 楽譜サンプル

Tricotism|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Tricotism(表記ゆれ:Tricrotism)は、PETTIFORD OSCAR(オスカー・ペティフォード)によるインストゥルメンタルのジャズ作品。歌詞は存在せず、作詞者は情報不明。初出年や初録音の詳細も情報不明だが、モダン・ジャズ期の代表的レパートリーとして扱われることが多い。タイトルどおり、機知に富んだラインと推進力のあるスウィング感が特徴で、ベースの音楽的可能性を拡張した一曲として知られる。

音楽的特徴と演奏スタイル

テンポは中速〜速めのスウィングで演奏されることが多く、ベースが主導する印象的なテーマが核になる。小編成ではベースとピアノ(あるいはギター)、ドラムの三者が対等に絡むアンサンブルが要点で、ウオーキングとメロディの切り替え、音域を活かした跳躍、クリアな発音が求められる。ハーモニーはビバップ語法に根差し、循環的なII–V進行や経過和音が現れやすい。キーや形式は版・編曲により差異があり、演奏現場では各バンドの解釈に合わせたアレンジが一般的である。

歴史的背景

戦後のニューヨークを中心にビバップが成熟していく過程で、ペティフォードはソリストとしてのコントラバス像を切り拓いた存在であり、本曲もその文脈に位置づけられる。バンドの土台に留まらず、ベースを旋律楽器として前面に押し出す発想が、作曲とアレンジの両面で反映されている。ジャズ作曲の実践知と即興性を橋渡しする教材的価値も高く、後続世代の演奏・作編曲に少なからぬ影響を与えた。

有名な演奏・録音

オリジナル作曲者であるオスカー・ペティフォード名義のセッション録音が基準点として参照されることが多い。以降は小編成のピアノ・トリオやギター・トリオ、ホーンを加えたコンボ、さらにはビッグバンドのアレンジでも取り上げられ、さまざまなテンポ感や対位法的処理で解釈が広がった。リイシュー盤やアンソロジーにも収録例が多く、現在は配信カタログでも複数の演奏を容易に比較・検討できる。

現代における評価と影響

Tricotismは、ベーシストにとっての定番レパートリーとして認知され、アンサンブル内での役割転換や音域設計を学ぶ題材としても重宝される。ベースが主導するテーマ提示、ソロから伴奏への機敏な移行、密度の高いインタープレイといった要素は、今日のモダン・ジャズの美学とも親和的で、ライブや教育現場のレパートリーとして継続的に選ばれている。

まとめ

オスカー・ペティフォード作曲のTricotismは、歌詞を持たないインストゥルメンタルのジャズ・スタンダードであり、ベースの表現力を前景化した作品として重要な位置を占める。出版年などの詳細に情報不明な点はあるものの、録音の蓄積と多様な編成での実演を通じて、その音楽的意義は揺るぎない。クリアなサウンドと躍動感を備えた演奏が求められ、今なお研究と実践の対象であり続けている。