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Virgo
- 作曲: SHORTER WAYNE

Virgo - 楽譜サンプル
Virgo|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Wayne Shorter作曲の「Virgo」は、Blue Noteのリーダー作『Night Dreamer』(1964)に収録されたインストゥルメンタル曲。録音は1964年4月29日、ニュージャージー州エングルウッド・クリフスのVan Gelder Studio。編成はWayne Shorter(ts)、Lee Morgan(tp)、McCoy Tyner(p)、Reggie Workman(b)、Elvin Jones(ds)。プロデュースはAlfred Lion、録音はRudy Van Gelder。ショーターの作曲家としての個性が端正に現れた小品として知られる。
音楽的特徴と演奏スタイル
本作はゆったりしたテンポのバラードとして位置づけられ、テナー・サックスの旋律は過度に歌い上げず、含意に富むラインで構成される。ホーンの厚塗りは避けられ、ピアノとベースが余白と間合いを活かして和声の揺らぎを支えるのが印象的。ダイナミクスは小さな始動から自然に熱量を高めつつも、音数を増やし過ぎない抑制が行き届いている。全体として、ショーター流の「静けさの中の緊張」を味わえる設計である。
歴史的背景
録音年の1964年は、ショーターがArt Blakey門下での活動を経て、同年後半にMiles Davis Quintetへ加わる直前期。『Night Dreamer』はBlue Noteにおける初の本格的リーダー作で、作曲家・即興家としての独自性が結晶化し始めた時期の重要ドキュメントだ。ハードバップから一歩進み、構造と余白を重視する彼の語法を提示した点で、レーベル史・作家史の双方において節目となる。
有名な演奏・録音
決定的なリファレンスは初出の『Night Dreamer』テイク。Lee MorganやMcCoy Tynerとの相互作用が抑制の効いた美しさをもたらし、アルバム内で緩急の対比を担う楽章として評価される。オリジナル以外の広く認知された名演、ならびに映画・テレビ等での顕著な使用例は情報不明。楽曲は各種再発・リマスターを通じて現在も安定して入手可能である。
現代における評価と影響
「Virgo」は、ショーターのバラード作法—ミニマルな素材、巧みな間、曖昧さを保った和声感—を学ぶ上での好例としてしばしば言及される。派手なクライマックスを避け、語り口と情緒を微細に制御する美学は、後続の作曲・編曲に示唆を与え続けている。アルバム全体の物語性の中で陰影を与える役割も再評価が進むポイントだ。
まとめ
歌詞を持たない小品ながら、「Virgo」はショーターの作曲意識とアンサンブル設計を端的に映し出す一曲。初出盤『Night Dreamer』の文脈と併せて聴くことで、1964年という転換期における作家性の輪郭と、抑制の美学がより鮮明に立ち上がる。詳細なカバー情報や映像使用は情報不明だが、オリジナル録音が今なお基準点として揺るぎない。