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Watermelon Man
- 作曲: HANCOCK HERBIE,HENDRICKS JON

Watermelon Man - 楽譜サンプル
Watermelon Man|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Watermelon Man」は、ハービー・ハンコック作曲によるジャズの代表曲。初出は1962年のアルバム『Takin' Off』で、当初はインストゥルメンタルとして発表。後年、ジョン・ヘンドリックスが歌詞を付けたヴァージョンも知られ、セッションの定番曲として世界的に演奏されている。都市生活の息遣いをリフに凝縮した親しみやすさと、即興に開かれた構造の両立が、長年のレパートリー定着を支えている。
音楽的特徴と演奏スタイル
リフを核にしたシンプルかつ強いフックが特徴。ピアノとベースの反復パターンにホーンのコール&レスポンスが重なり、都会的でソウルフルなグルーヴを生む。演奏では、テンポやフィールの選択幅が広く、ストレートアヘッド、ラテン、ファンクへ自在に拡張できる柔軟性が評価される。ヴォーカル版ではリズムの切れ味を保ちつつ、言葉のアクセントがビートをさらに立体化させる。
歴史的背景
作曲の着想は、作曲者が幼少期に耳にした行商人の呼び声や街のリズムにあるとされる。1960年代初頭のブルーノート期、ハードバップからソウル・ジャズへ移行する潮流の中で誕生し、聴きやすいメロディとダンサブルなリズムが新しい聴衆をジャズに引き寄せた。クラブやラジオに乗りやすいキャッチーさを備え、ジャズの大衆的側面を更新した象徴的楽曲となった。
有名な演奏・録音
初演盤『Takin' Off』のオリジナル・テイクは、端正なピアノ・リフと余白を活かしたソロが魅力。続くモンゴ・サンタマリアの1963年版はアフロ・キューバンの色彩で全米ヒットを記録し、ラテン・ジャズの名演として定着した。さらに1973年『Head Hunters』ではファンクへ大胆に再構築され、電化サウンドとポリリズムで新機軸を打ち立てた。いずれも同曲の多面性を決定づけた重要盤である。
現代における評価と影響
この曲は入門者からプロまで幅広く取り上げられ、ジャム・セッションの共通語として機能する。コンボからビッグバンド、ラテン・バンドまでアレンジの自由度が高く、教育現場でもリズム訓練とアンサンブルの教材として重用される。複数の決定的ヴァージョンを持つことで、時代や文脈に応じた解釈が可能な“生きた”スタンダードとして位置づけられている。
まとめ
耳に残るリフと変幻自在のグルーヴ、そして時代を画す名演の積み重ねが、「Watermelon Man」を不朽のスタンダードへ押し上げた。インスト曲として生まれ、歌詞版やファンク再構築を経ても本質は揺るがず、ジャズの柔軟性と普遍性を体現し続けている。今後もステージで更新されるべき、教材兼名曲である。