Wild Man Blues
- 作曲: MORTON JELLY ROLL

Wild Man Blues - 楽譜サンプル
Wild Man Blues|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Wild Man Blues は、Jelly Roll Morton(ジェリー・ロール・モートン)作曲による初期ジャズを代表するスタンダード。1927年にLouis Armstrong and His Hot Sevenが録音し、広く知られるようになった。タイトルが示す通りブルースを基盤とする器楽曲で、一般的に歌詞は伴わない。ニューオーリンズ由来のアンサンブル美学を色濃く保ちながら、ソロ・ブレイクによる即興を前面に押し出す構造が、後のジャズ発展にも影響を与えた。
音楽的特徴と演奏スタイル
基本は12小節ブルースの形式をとり、ストップタイムに乗せたブレイクが象徴的。コルネット(またはトランペット)のソロが要となり、クラリネットやトロンボーンが対位的に絡む初期ジャズ特有のコレクティブ・インプロヴィゼーションが展開される。ピアノやバンジョー、チューバ(のちにベース)、ドラムスが堅実に二拍感を支え、リフやシンコペーションで推進力を生む。メロディはシンプルだが、各コーラスでの装飾音やフレージングの差異が聴きどころで、演奏者の語法が如実に表れる。
歴史的背景
1920年代後半、ニューオーリンズ出身の奏者たちがシカゴで録音活動を活発化させるなか、本曲はその様式を決定づける重要レパートリーとなった。モートンは作曲家・編曲家として初期ジャズの文法を整備し、ブルース形式にストップタイムやリフ構造を融合。本曲はそうした語法の典型例であり、録音技術の進展と相まって、ソロの表現力とアンサンブルの立体感を世に印象づけた。
有名な演奏・録音
決定的な演奏として、1927年のLouis Armstrong and His Hot Sevenによる録音が挙げられる。コルネットの見事なブレイクと、クラリネットやトロンボーンとの緊密な掛け合いは、本曲の解釈における基準点となった。その後も伝統派ジャズの主要バンドやコンボが数多く録音し、ライブの定番レパートリーとして継承。個々の奏者の語法により表情が大きく変わるため、録音ごとの差異を聴き比べる面白さがある。
現代における評価と影響
Wild Man Bluesは、初期ジャズの語法を学ぶうえでの必修曲として扱われ、ジャム・セッションや教育現場でも頻繁に取り上げられる。ブルース形式の器楽的可能性、ストップタイムのダイナミクス、集団即興の設計など、アレンジと即興のバランスを体得する教材として有効であると評価されている。新録音でもテンポ設定やコーラス配分、ブレイクの配置に創意が凝らされ、古典でありながら現在進行形の表現の場を提供し続けている。
まとめ
Jelly Roll Morton作曲のWild Man Bluesは、12小節ブルースを基盤に、ストップタイムのブレイクと集団即興を核とする初期ジャズの精華である。1927年の名録音を起点に、数多くの演奏者が解釈を重ね、今日までスタンダードとして演奏され続ける。形式はシンプルだが、語法の深さは尽きない。入門者の学習曲としても、熟達者の表現の場としても、普遍的な価値を持つ名曲だ。