Yellow Dog Blues
- 作曲: HANDY WILLIAM C

Yellow Dog Blues - 楽譜サンプル
Yellow Dog Blues|楽曲の特徴と歴史
基本情報
W.C.ハンディ(表記:HANDY WILLIAM C)作曲の「Yellow Dog Blues」は、初期ジャズ期に広く演奏されたブルース/ラグ由来のスタンダード。正式な初出年や初演者は情報不明だが、タイトルの“Yellow Dog”は米ミシシッピのヤズー・デルタ鉄道の愛称を指すとされ、南部の風土と移動のイメージを色濃く帯びる。歌詞は存在するが、演奏現場では器楽版として取り上げられる機会も多い。
音楽的特徴と演奏スタイル
演奏では2ビートのラグタイム由来シンコペーションが要。コルネット/トランペットが主旋律、クラリネットが対旋律で絡むディキシーランド編成が定番。ブレイクやストップタイム、コール&レスポンスを生かし、歌唱版ではボーカルとホーンの掛け合いが魅力となる。行進曲的な推進力と、ブルース特有の嘆きと高揚を併せ持つ構築が聴きどころだ。
歴史的背景
“ブルースの父”W.C.ハンディは、楽譜出版を通じてブルースを全米に普及させた。本作もその潮流の中でバンドや歌手のレパートリーに入り、ダンスホールや劇場で定着。鉄道をモチーフにした題材は、移動や都市化、労働者文化と結びつき、デルタの物語性を都市ジャズへ橋渡しした。結果として、南部の地域色を保ちながら大衆娯楽へ接続する重要な楽曲となった。
有名な演奏・録音
戦前のディキシーランド・コンボ、戦後のトラッド系バンドまで録音は多数。行進曲風のテンポ設定で歓声とともに盛り上げるライヴ定番として親しまれ、ニューオーリンズ系のパレードや学習用アンサンブルでも頻出する。個別の代表的音源や映画での使用については情報不明だが、編成や時代を超えて継続的に録音されてきたことは確かだ。
現代における評価と影響
今日では、ジャズ史やアメリカ音楽史を学ぶ教材として位置づけられ、ブルースの語法や早期スウィングへの過渡的アーティキュレーション、アンサンブルの役割分担を体得できる曲として重宝される。編成やテンポの自由度が高く、各地のトラッド・ジャズでも演奏頻度が高い。地域の歴史や鉄道文化と結びつけたプログラムにも適し、解説付きコンサートでの採用例も多い。
まとめ
Yellow Dog Bluesは、鉄道由来のイメージと初期ジャズの躍動を併せ持つスタンダード。詳細な初出や決定的名演の特定は情報不明だが、W.C.ハンディの創作がブルースを大衆音楽へ押し上げた事実を実感させる一曲と言える。歌唱・器楽いずれの形でも映え、入門者から愛好家まで幅広く楽しめるレパートリーだ。