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Passarim

  • 作曲: JOBIM ANTONIO CARLOS,JOBIM PAULO
#ボサノバ
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Passarim - 楽譜サンプル

Passarim|歌詞の意味と歴史

基本情報

「Passarim」は、アントニオ・カルロス・ジョビンとパウロ・ジョビンによる共作で、1987年発表の同名アルバムに収録されたボサノヴァ作品。タイトルの「Passarim」はポルトガル語で「小鳥」の意。歌詞はポルトガル語で、作詞者は情報不明。ジョビン自身の歌とピアノを中心に、繊細なアンサンブルで録音され、後年のジョビン像を象徴する代表曲の一つとして認識されている。国内外の演奏家によって取り上げられる機会も多く、ブラジル音楽とジャズの橋渡しをするレパートリーとして位置づけられることが多い。

歌詞のテーマと意味

歌詞の核心は、小鳥=自然への眼差しと、その自由さ・はかなさを通じて人間社会を照射する比喩性にある。都市化の喧噪や時代の移ろいに対し、自然のリズムを信じる静かな態度がにじみ、ジョビン晩年の環境意識とも響き合う。直接的なメッセージよりも、鳥のさえずりや風景を想起させる言葉遣いで情景を描き、聴き手に解釈の余白を残すのが本曲の美点。明快なセンチメントと含みのあるイメージが共存し、ボサノヴァの抒情が現代語で更新されている。

歴史的背景

1950〜60年代に世界的潮流となったボサノヴァは、1970年代以降に多様化と国際化を深めた。1980年代後半に発表された「Passarim」は、国際的名声を確立したジョビンが、自身の語法をより室内楽的で自然志向のサウンドへ洗練させていった時期の産物である。エレガントな和声運びや控えめなシンコペーションは初期の作風を受け継ぎつつ、成熟した時間感覚と陰影の濃いテクスチャで再提示され、同世代・次世代の作曲家に静かな影響を与えた。

有名な演奏・映画での使用

基準となる録音は、ジョビン本人が歌とピアノで参加した1987年アルバム『Passarim』のヴァージョン。以後、ブラジル音楽やジャズの奏者によるカバーやインストゥルメンタル解釈が散見されるが、網羅的なリストは情報不明。映画やテレビでの顕著な使用も情報不明である。ただし、クラブ・ジャズやボッサ系のライブ・レパートリーとして定着しており、国際的なフェスティバルや小編成のコンサートで継続的に取り上げられている。

現代における評価と影響

今日の聴取環境では、ストリーミングでの再発見を通じて再評価が進み、教則やワークショップで和声進行・メロディ運びの教材として引用される例もある。大ヒット曲に比べ知名度は控えめだが、作曲技法と詩情の均衡、そして言語や編成を超えて成立する透明感は、多くの演奏家にとって指標となっている。ボサノヴァを21世紀的な感性で受け継ぐ際の、静かなモデルケースといえる。

まとめ

「Passarim」は、自然を主題とした詩情と、ジョビン語法の成熟が結晶した一篇である。過度な装飾を避け、最小限の素材で深い余韻を生む設計は、時代を越えて色褪せない。初めて触れる聴き手にはジョビン本人の1987年録音を、演奏家には歌詞のニュアンスと和声の移ろいを同時に意識したアプローチを勧めたい。