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Where Are You
- 作曲: ADAMSON HAROLD,MC HUGH JIMMY

Where Are You - 楽譜サンプル
Where Are You|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Where Are You は、作曲ジミー・マッキュー、作詞ハロルド・アダムソンによる1937年のバラード。映画「Top of the Town」でガートルード・ニーセンが初披露し、その後ポピュラー/ジャズ双方のレパートリーとして広く定着した。切実な孤独と喪失感を湛えたメロディと歌詞が核にあり、ヴォーカルはもちろんインストゥルメンタルでも頻繁に取り上げられるスタンダードである。
音楽的特徴と演奏スタイル
基本はスロー~ミディアム・スローのバラード。息の長い旋律線と半音階的な和声進行が特徴で、テンションを伴う柔らかな響きが求められる。ヴォーカルではレガート中心のフレージングと間(ま)のコントロールが要点。インストではテナーサックスやトランペットが空間を活かし、ダイナミクスを大きく取る解釈が好まれる。ピアノ・トリオ編成では内声の動きとサステインを生かしたヴォイシングが効果的だ。
歴史的背景
1930年代後半のハリウッドは、映画用に書かれた楽曲がブロードウェイ曲と並んでアメリカン・ソングブックを形成していた時期。マッキューとアダムソンのコラボレーションは、その潮流の中で洗練されたバラードの理想形を提示した。スクリーンでの初出後、ダンスバンドやラジオを通じて広まり、やがてジャズ・ミュージシャンの即興語彙にも取り込まれていった。
有名な演奏・録音
初演者としてはガートルード・ニーセンが知られる。最も広く認知された名唱はフランク・シナトラによる1957年のアルバム「Where Are You?」。繊細なバラード解釈が決定版のひとつとされ、後続世代の歌手や管楽器奏者の手本となった。そのほか、多数のジャズ・ヴォーカリストとテナーサックス奏者がバラードの定番曲として取り上げている。
現代における評価と影響
Where Are You は、失われた愛を静かに見つめるトーチ・ソングとして、現在も歌唱テクニックと表現力を学ぶ教材的存在。セッションやリサイタルのバラード枠で定番となり、編成やキーを問わず対応できる柔軟さも評価される。録音史の厚みと解釈の幅広さが、今日のプレイヤーにとっても探究の余地を与え続けている。
まとめ
映画発のバラードとして生まれ、ジャズ・スタンダードへと定着した本曲は、優美な旋律と胸に迫る情感で長く愛されてきた。歌でも器楽でも、音数を抑えた表現と豊かな響きの設計が鍵となる、一聴して忘れがたい名曲である。